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2018

第196国会 参議院 本会議 2018年1月26日


○福山哲郎君 立憲民主党の福山哲郎です。
会派を代表して、総理に対して質問いたします。
草津白根山の噴火によって亡くなられた自衛官に心から哀悼の意を表します。
さて、立憲民主党は、総選挙公示日の僅か一週間前に結党したにもかかわらず、このままでは選択肢がない、何とかしてほしいという国民の声に支えられ、望外の約一千百万票という御支援を賜りました。選挙戦を通じて訴えた、立憲主義を守り、草の根からの真っ当な政治を取り戻すため、うれしいことに、この通常国会から参議院においても、蓮舫さん、江崎さん、風間さん、有田さん、川田さんという五名の一騎当千のつわものに仲間に加わっていただき、新しい会派としてスタートすることになりました。どうかよろしくお願い申し上げます。
私たちは、新しい綱領を策定し、多様性を認め合い、困ったときに寄り添い、お互いさまに支え合う社会、日々の暮らしや働く現場の声を立脚点とするボトムアップの政治の実現をうたっています。
そして、いち早く立憲民主党つながる本部を立ち上げました。全国には、待機児童、子供の貧困、障害者、LGBT、SDGs、エネルギー、差別等々、あらゆる課題に向き合い、活動している多くの方々がいらっしゃいます。これらのNPO、NGOなどの方々と積極的につながり、現場の声を継続的に受け止め、市民と協働の場を展開していきたいと考えています。
時間が限られていますので、課題を絞って質問させていただきます。
北朝鮮による核・ミサイル開発は、深刻な脅威であり、到底容認できません。私たちは専守防衛の下、現実的な安全保障政策を推進していきます。
一方、最近、安倍政権では、突然、長射程巡航ミサイルの導入を決め、護衛艦「いずも」の空母化案まで浮上しています。この動きは、歴代の自民党政権を含めて積み重ねてきた専守防衛を逸脱する懸念があると言わざるを得ません。
これまで政府は、長距離戦略爆撃機あるいは攻撃型空母を保有することはできない、必要最小限度と答弁してきました。今回、政府は敵基地攻撃能力を目的とするものではないと説明していますが、問題なのは目的の有無ではなく実際の能力であり、最小限度を逸脱すると考えられます。これまでの答弁との整合性についてお答えください。
一方で、概算要求になかった装備が突然予算案に盛り込まれたことは極めて異例です。なぜでしょうか。中期防には入っているのでしょうか。
長射程巡航ミサイルをスタンドオフミサイルと防衛省はあえて説明していますが、さきの総選挙でも自民党はこの問題に触れておらず、国民の目をごまかそうとしているのは明らかです。また、配備は五年から七年後になると言います。本当に現下の島嶼防衛の充実を目指すのであれば、海上保安庁の装備の充実、人員確保、領域警備法の制定の方が急務だと考えますが、見解をお聞かせください。
そして、結果として、日米同盟における矛と盾の関係も変質しようとしています。国際社会の理解を得られず、無用の緊張と懸念を与えることになります。こちらが緊張を与えないと幾ら主張しても、国際政治では余り意味がありません。
そんなさなか、昨年の八月、我が国航空自衛隊の戦闘機が米空軍戦略爆撃機B52と共同訓練していたことが明らかになりました。B52は核兵器搭載可能な爆撃機です。北朝鮮に対する抑止力が必要という考え方は理解しているつもりですが、唯一の被爆国であり、非核三原則を持つ我が国が米国と核攻撃まで共に行動するつもりなのでしょうか。それは最小限度を超えていないのか、お答えください。
また、米国が核兵器の所在を明らかにしないNCND政策が原則であることも承知の上ですが、そのときのB52の核の搭載の有無についてもお答えください。また、防護の任務は付与されていたのかどうか。その場合、アメリカからの要請はあったのか。さらに、NSCは開催されたのでしょうか。総理が明らかにされたように、B1Bとの訓練は度々公表してきたのに、なぜB52の場合は即時かつ適切に公表しなかったのか。理由をお答えください。
総理と防衛大臣は専守防衛はいささかも変わらないと繰り返すものの、実態は変質しつつあります。安倍政権は、安保法制に続いて、立憲主義をないがしろにし、なし崩し的に専守防衛を変えようとしています。安倍総理の考える専守防衛とは何なのか。さらに、敵基地攻撃能力についてはどうお考えでしょうか。
一方、沖縄では在日米軍ヘリの墜落、不時着事故が相次いでいます。今月に入って既に三件、異常事態です。
普天間第二小学校の上空を米軍のヘリコプター三機が飛行したか否か、政府と米国側の主張は真っ向から対立しています。事実は一つなのに、なぜこのような事態が起こるのでしょうか。こんな事実確認に一体何日掛かっているのでしょうか。沖縄の皆さんの不安と怒りは想像に余りあります。主権国家として矜持ある対応を求めますが、総理の見解を伺います。
昨年十一月、森友学園への国有地売却問題で会計検査院の検査結果が公表されました。この検査は、本院予算委員会で与野党が全会一致で会計検査院に求めたものです。
その報告書によれば、売却について、合規性、経済性等から適切とは認められない、ごみの量や撤去費用も根拠が確認できない、文書管理についても会計経理の妥当性について検証を行えないと指摘されています。
政府は、法令に基づき適切に処理したと繰り返してきましたが、まさに野党が指摘してきたとおりの結果となりました。また、売却交渉の音声データが出てきており、価格の交渉はしていないという当時の佐川局長の答弁が虚偽である疑いが濃厚です。言わば、安倍総理を始め政府のこれまでの国会での説明が、説得力も根拠も乏しく、何の説明にもなっていなかったということです。
総理、この指摘は、野党でも何でもありません、参議院議長に提出された会計検査院からのものです。これからどうするのではなく、この森友問題の責任の所在はどこにあるのか、お答えください。
昭恵夫人の関与もいまだに強く疑われています。まずは総理自ら国民に謝罪するべきではありませんか。そして、この報告書の結果、どのように責任を取るおつもりでしょうか。
今年になって、驚くべきことに、財務省から交渉関連文書なるものが出てきました。会計検査院に確認したところ、参議院議長に報告する何と前日に、財務省から当該記録があったとの連絡が入ったそうです。検査中に記録を提出せず、アリバイのように報告前日に連絡するという極めて不誠実な対応です。このやり取りをどう思われますか。
総理、これでも佐川長官人事を適材適所と強弁を募るつもりですか。私は、佐川長官も総理と昭恵夫人へのそんたくで被害を被った一人と考えますが、それでも長官にはふさわしくありません。更迭を求めます。
安倍政権は原子力と石炭火力をベースロード電源とし、二〇三〇年、原子力は二〇%台と、震災発生前とほとんど変わっていません。徐々に低減していくという総理の発言は実態とは異なっています。過度な石炭依存もパリ協定に逆行しています。
民主党政権が導入したFITにより、震災後六年間の再生可能エネルギーの拡大は目覚ましく、二〇一〇年に九%だったものが二〇一六年度には一五%まで伸びており、稼働率を勘案しても、原発約二十基分の再生可能エネルギーの設備認定がされています。震災直後は一時的に増えたCO2も、原発稼働がほぼゼロだったにもかかわらず、現在は減少しています。
アップル、グーグルなどの世界の大企業や自治体は、次々と再生可能エネルギー一〇〇%という野心的な宣言をし始めています。原発ゼロはもはやリアリズムです。こういった動きをどう評価されますか。今の政府の姿勢とは異なる積極的な後押しを求められると考えますが、いかがでしょうか。
私たちは、原発ゼロ基本法案を三月に提出する予定です。総理は、特別国会で枝野代表に、原発ゼロということは責任あるエネルギー政策とは言えませんと答弁されました。先般、小泉、細川両元総理が参加されている、いわゆる原自連とも意見交換をさせていただきました。我が党の菅元総理も含めて、党派を超えて三人の元総理が原発ゼロを訴えていることに対して、総理はそれでも無責任だと言い放つのでしょうか。世界の潮流にも福島の厳しい現実にも、廃炉や使用済核燃料処理にも目をつむり原発再稼働に突き進む姿勢こそが無責任と考えますが、いかがでしょうか。
働き方改革については、政府案の時間外労働の上限規制月百時間は過労死ラインを大きく超えるもので、過労死容認法案になりかねません。私たちが検討している対案においては、いわゆるインターバル規制の導入も提案していくつもりです。見解を求めます。
昨年時点では、共謀罪に基づく任意捜査、強制捜査は共にゼロでした。不当な人権侵害が発生する前にこの法律を廃止するべきと考えます。既に共謀罪廃止法案を提出しています。
さらに、多様性ある社会を目指して、LGBT差別解消法案、夫婦別姓の選択を可能とする民法改正案、手話言語法案、農業者戸別所得補償法案などを今回に提出する予定です。各会派各党の御協力をお願いします。
日本の政治に対する信頼を取り戻し、内政、外交、共にビジョンを提示し、徹底的に国民とつながる新しい政党の在り方を模索していく決意です。春頃には党員に代わる立憲パートナーシップメンバー制度を創設し、国民に広く呼びかけていくつもりです。
○議長(伊達忠一君) 福山君、時間が超過しております。簡単に願います。
○福山哲郎君(続) 試行錯誤の繰り返しかもしれませんが、草の根から、日本の政治に大きな一石を投じられるよう、懸命に努めてまいることをお約束し、質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 福山議員にお答えいたします。
護衛艦「いずも」及びスタンドオフミサイルについてお尋ねがありました。
まず、これまで政府として「いずも」の空母化に向けた具体的な検討を行ってきた事実はありません。
スタンドオフミサイルは、我が国防衛に当たる自衛隊機が相手の脅威の圏外から対処できるようにすることで、隊員の安全を確保しつつ、我が国を有効に防衛するために導入するものであります。
専守防衛の下、あくまでも国民の生命、財産、我が国の領土、領海、領空を守り抜くため自衛隊の装備の質的向上を図るものであり、自衛のための必要最小限度のものです。
このような能力に関しては日頃より不断の検討を行ってきたところであり、所要の調整等の結果、今般導入の見通しが立ったことから中期防の枠内で予算案に盛り込んだものであります。
スタンドオフミサイルの導入と島嶼防衛の充実についてお尋ねがありました。
多くの島嶼を有している我が国にとって、島嶼防衛は極めて重要です。このため、自衛隊の能力向上を図ると同時に、海上保安庁の装備、人員の充実など、領海警備のための海上保安体制の強化にも取り組んでいます。
スタンドオフミサイルは、我が国防衛に当たる自衛隊機が相手の脅威の圏外から対処できるようにすることで、隊員の安全を確保しつつ、我が国を有効に防衛するために導入するものであり、島嶼防衛のためにも極めて重要です。
国民の生命、財産、我が国の領土、領海、領空を守り抜くため、政府としては、島嶼防衛を含むあらゆる事態に対応できる体制の強化充実を着実に進め、万全を期してまいります。
また、政府としては、いかなる不法行為に対しても切れ目のない十分な対応を確保するため、海上警備行動に係る手続の迅速化のための閣議決定を行い、関係機関の対応能力の向上等の取組も進めてきており、現時点で領域警備法といった新たな法整備が必要とは考えておりません。
航空自衛隊と米空軍との共同訓練についてお尋ねがありました。
我が国は、非核三原則を国是として堅持しつつ、専守防衛に徹する考えであり、このような考え方に全く変わりはありません。また、いわゆる敵基地攻撃については、日米の役割分担の中で米国の打撃力に依存しています。その上で、北朝鮮の核・ミサイルの脅威から我が国を守るためには、米国の核及び通常戦力による抑止力は不可欠と考えています。
御指摘の航空自衛隊と米空軍のB52との共同訓練は、日米同盟全体の抑止力、対処力を一層強化するものです。自衛隊の行動が自衛のための必要最小限を超えるといった御指摘は当たりません。
なお、米側は我が国の非核三原則に係る立場を十分理解していることから、米側が核兵器搭載の戦略爆撃機を我が国に飛来させたり、領空を通過させたりするようなことは現状において想定されません。
自衛隊法に基づく米軍警護の個別具体的な実施の状況、警護の要請、国家安全保障会議での審議の有無等については、米軍の活動への影響や相手方との関係もあり、お答えすることは差し控えますが、これまで艦艇及び航空機に対して実施してきたところであります。
共同訓練の公表については、個々の訓練ごとに相手国との関係を始めとする様々な要素を総合的に考慮し、公表の有無や時期等を判断しており、本訓練についてもこのような考え方の下対応したものと承知しています。
専守防衛と敵基地攻撃能力についてお尋ねがありました。
専守防衛とは、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略であり、我が国防衛の基本方針です。専守防衛に関する政府の考え方は、これまでも一貫したものであり、今後ともいささかの変更もありません。
いわゆる敵基地攻撃については、日米の役割分担の中で米国の打撃力に依存することとしており、今後とも、日米間の基本的な役割分担を変更することは考えていません。
また、平和安全法制は、その内容においても手続においても、憲法の下、適切に制定されたものです。立憲主義をないがしろにしたとの御指摘は全く当たりません。
米軍ヘリの事故と普天間第二小学校の上空の飛行についてお尋ねがありました。
米軍の運用に当たって、地域住民の方々の安全確保は大前提であり、事件、事故はあってはなりません。米軍機の事故や予防着陸、緊急着陸が相次いでいる中、在日米軍の全ての航空機について徹底的な整備、点検を確実に実施し、徹底した再発防止のための対策を講ずるよう米国に強く求めています。
米軍ヘリの普天間第二小学校の上空飛行については、現在、日米双方において、それぞれが確認した記録等について検証しているものと承知しています。重要なことは、小学校の上空を飛行しないことであり、引き続き、米側に対して、普天間飛行場周辺の全ての学校上空の飛行を最大限可能な限り避けるとの方針をしっかりと遵守するよう求めるとともに、日本側においてもその状況の確認に努めてまいります。
今後とも、安全の確保については、最優先の課題として日米で協力して取り組んでいきます。
森友学園への国有地売却等についてお尋ねがありました。
森友学園への国有地売却については、私自身、さきの衆議院選挙における各種の討論会やこれまでの国会においていただいた質問に丁寧に説明してきたところであり、今後ともしっかりと説明をしていかなければならないと考えています。
他方で、かねてから、国有地の売却価格については、会計検査院がきっちりと厳正に調査をするものと思っているということを申し上げてきたところです。その後、政府から独立した機関である会計検査院が検査を行い、さきの国会において報告が提出されました。その報告については、真摯に受け止める必要があると思っております。
さきの国会において、財務省から、この報告の内容を重く受け止め、これをしっかり検証した上で、国有財産の管理、処分の手続等について必要な見直しを行っていくことに尽きるという答弁がありました。
国有地は国民共有の財産であり、その売却に当たって、国民の疑念を招くようなことがあってはなりません。私としても、国有財産の売却について、業務の在り方を見直すことが必要と考えており、関係省庁において今後の対応についてしっかりと検討させているところです。
文書の管理、保存については、各行政機関が責任を持って行っており、また、報道された音声データを含め、現場でのやり取りについてもこれまでも説明してきたところですが、今後、国会の場において、財務省など関係省庁からしっかり説明させていただきます。
国税庁長官の人事については、他の全ての人事と同じく、適材適所の考え方に基づき行ったものであります。
なお、私や妻がこの国有地払下げに、もちろん事務所も含めて、一切関わっていないということはこれまでも申し上げてきたとおりであります。
再生可能エネルギーの拡大と原発ゼロについてお尋ねがありました。
資源に乏しい我が国にとって、電気料金のコスト、気候変動問題への対応、エネルギーの海外依存度を考えれば、原発ゼロということは責任あるエネルギー政策とは言えません。
他方で、原発依存度を可能な限り低減するとの考え方の下、徹底した省エネルギーの推進、再生可能エネルギーの最大限の導入に取り組むことは、安倍内閣の一貫した方針です。
こうした中で、民間企業においても、自主的に再エネ導入拡大に向けた様々な取組が行われていることは歓迎すべきことであり、引き続き、政府においても全力で取り組んでまいります。
原発の再稼働についてお尋ねがありました。
現在、多くの原発が停止している中で、震災前に比べ、一般家庭では平均で約一〇%電気代が上昇し、国民の皆さん、経済的に大きな御負担をいただいている現実があります。
原発の再稼働については、御指摘のような様々な御意見を表明する方がおられますが、こうした国民的な負担を踏まえれば、原発ゼロということは責任あるエネルギー政策とは言えません。
同時に、廃炉や使用済燃料の処分などの課題に真正面から取り組んでまいります。そして、原発については、いかなる事情よりも安全性が最優先であります。
東京電力福島原発事故について、政府及び原子力事業者が、いわゆる安全神話に陥り、あのような悲惨な事態を招いたことを片時も忘れず、真摯に反省し、その教訓を踏まえつつ、二度と事故を起こさないことは当然のことです。
今後も、高い独立性を有する原子力規制委員会が科学的、技術的に審査し、世界で最も厳しいレベルの新規制基準に適合すると認めた原発のみ、その判断を尊重し、地元の理解を得ながら再稼働を進めていく考えであります。
働き方改革についてお尋ねがありました。
過労死、過労自殺の悲劇を二度と繰り返さない。強い決意で長時間労働の是正に取り組みます。
そのため、労使が合意すれば上限なく時間外労働が可能となる現行の仕組みを改めます。史上初めて、労働界、経済界の合意の下に、三六協定でも超えてはならない罰則付きの時間外労働の限度を設けます。具体的には、時間外労働の上限は、月四十五時間、かつ、年三百六十時間と法律に明記します。その上で、労使が合意した場合でも上回ることができない上限を年七百二十時間とし、その範囲内において、複数月の平均では八十時間以内、単月では百時間未満と定めています。加えて、勤務間インターバル制度についても、その普及に努めます。
このように、今回の改革は長時間労働に対する規制を強化するものであり、安倍内閣として、働き方改革関連法案を早期に提出し、法案の成立に全力を傾注していきます。
また、政府としては、労働基準法等の遵守を徹底するため、労働基準監督署の人員や体制の整備に取り組んでいきます。(拍手)

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