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2016
第192国会 参議院 本会議 2016年10月19日
○福山哲郎君 私は、ただいま議題となりましたパリ協定について、会派を代表して質問をいたします。
私がライフワークとして気候変動問題に取り組んできたことに鑑み、質問の機会をいただいた同僚議員の皆様に心から感謝申し上げます。
質問に先立ち、十六日に投開票された原発の再稼働が争点となった新潟県知事選挙において、再稼働慎重派の米山隆一氏が当選を果たされました。この結果に対して、経済産業大臣並びに原子力規制委員会を所掌する環境大臣、それぞれの受け止め方をお伺いします。
さて、まさに今日、十月十九日がCOP22で開催される第一回のパリ協定締約国会合、CMA1に批准国として参加できる期限です。日本では、閣議決定、国会提出が先週の火曜日、今日から審議が始まったばかりですから、当然間に合うはずがありません。第一回会合ではオブザーバーでの参加になることが確実です。
会合には出席できるので問題ないと環境省は言いますが、とんでもありません。オブザーバーには採決権がありません。少なくとも協定上は第一回会合で六項目に及ぶ手続、ルールを定めることになっています。この中には、我が国が長年主張してきた二国間クレジットを含む市場メカニズムに関するものも含まれています。つまり、今後のルールメークの主導権を我が国は得られません。
先日の予算委員会で、総理は、パリ協定の閣議の日程については十月中旬に行うと答弁されました。元々、日本政府はCOP22の第一回会合に間に合わせるつもりはなかったということでしょうか。それとも、COPまでに発効することなど全く想定していなかったのでしょうか。外務大臣、お答えください。
また、安倍政権は、四月にパリ協定の署名をしてから、これまで一体何をしていたのでしょうか。これほどまでに国会提出が遅れた理由も併せてお答えください。
さらに、アメリカや中国の動きを察知していなかったのでしょうか。オバマ政権がパリ協定承認をレガシーと位置付けていたこと、二〇一四年、一五年と続けて米中は首脳会談で気候変動にコミットしたこと、そして、本年九月、G20サミットでそろってパリ協定承認を発表しました。外務大臣、この米中同時承認について、アメリカから事前に我が国に連絡はあったのでしょうか。
インドやEUも今月初めに批准し、十一月四日にパリ協定が発効することとなり、日本は完全に蚊帳の外、出遅れました。インドやEUの動向を見誤った理由も併せてお答えください。
安倍総理は、十二か国中いまだに承認ゼロ、アメリカ大統領選挙の二人の候補者はいずれも反対のTPP協定の承認を今国会で強く求めており、所信表明でも言及されています。一方で、昨日の時点で八十一か国、世界の排出量合計の約五九%の批准の上、発効に至るパリ協定は所信表明でも触れず、るる述べたような不誠実かつ消極的な対応に終始しています。まさにあべこべであり、優先順位がおかしくありませんか。外交失政と言わざるを得ません。
政府の責任を棚に上げ、今頃国会に提出して、審議もそこそこに承認をなどと都合のいいことを言い、野党の抵抗次第などというような報道まで出ていることは誠に遺憾であり、政府に猛省を求めます。国会は政府の尻拭い機関ではありません。いたずらに審議を長引かせるようなことは一切しませんが、連合審査を含め、真っ当な審議を求めるのは当然のことと考えます。
昨年、世界全体の平均気温は過去最高を記録し、過去百三十年間で〇・八五度上昇しています。そして、NASAによれば、今年も一八八〇年以降で最も暑い年となると見込まれています。また、ロンドン大学の試算では、地球温暖化がこのまま進むと、今世紀末までに株式などの金融資産に最高二十四兆ドル、約二千七百兆円の損失が出るおそれがあるとしています。
二〇一三年十一月、スーパー台風ハイエンがフィリピンを襲い、死者・行方不明者数は約八千人、被災者数は千六百万人以上、家屋の倒壊は百十四万戸余りという類を見ない被害が発生しました。
翌十二月、集中豪雨がカリフォルニアを襲いました。それが一転して、翌年には、五十年に一度の干ばつに見舞われ、ダムの貯水容量が約二六%にまで低下しました。
昨年、インドの首都ニューデリーでは、最高気温が何と四十五度に達し、余りの暑さのためにアスファルト舗装の道路が溶けるという事態になりました。
我が国でも、広島の土砂災害、鬼怒川の氾濫もありました。私の地元京都府福知山市でも、二〇一三、一四年と二年続けて洪水被害がありました。今年は、夏から秋にかけて相次いで台風が上陸し、各地に被害をもたらしました。これらの台風と温暖化が直接影響しているとは断言できませんが、たとえ一度の気温上昇でも、大雨、洪水、熱波などの異常気象のリスクが高くなることが分かっています。
日本も他人事ではありません。気候難民という言葉も使われ、多くの国々の重要なインフラや領土保全に及ぼす気候変動の影響は、地域紛争、そして国家安全保障にさえ関わってくると考えられてきています。
そうした中、昨年の十二月、COP21でパリ協定が採択されました。
パリ協定の大きな成果の一つが、産業革命前からの平均気温の上昇を二度未満に抑制すること、一・五度までの努力目標を掲げたことです。
パリ協定の承認に当たり、我が国としても、このいわゆる二度目標、一・五度努力目標を国際社会と共有し、あらゆる政策を駆使して達成するつもりであるという決意を改めて確認したいと考えます。環境大臣、お答えください。
政府は、長期目標として、二〇五〇年までに八〇%の温室効果ガスの排出削減を目指すとしています。
その長期目標は、どのようなプロセスで策定されるのでしょうか。現在、環境省と経済産業省の中にそれぞれ委員会が設けられ、同時並行して年度内での取りまとめを目指しています。その後、政府全体としての戦略をどのように取りまとめるのでしょうか。相変わらずの縦割りで進むのでしょうか。また、取りまとめる過程で、国際NGOなどの市民参加のプロセスを取り入れるつもりはありますか。環境大臣及び経済産業大臣に伺います。
市民参加という観点で一つお伺いします。
二〇〇九年のCOP15に際して、当時の民主党政権では、初めて国際NGOのメンバーや産業界、労働組合の代表に政府代表団として参加していただきました。気候変動問題において政府交渉団に市民の代表が加わるのは世界では普通のことです。政府代表に参加していただくことで、国際交渉の厳しい現実を知ってもらい、日本政府の交渉スタンスを明らかにし、市民の意見を採用したいとして進めていました。
ところが、自公政権に戻り、政府代表団からこの市民代表が外されることとなりました。市民参加、情報公開という点から大きく後退するもので、国際的な潮流にも反します。COP22を前に、NGOや労使など市民代表の政府代表団への参加について、外務大臣の認識を改めてお伺いします。
パリ協定とともに採択されたCOP21決定では、二〇一八年に長期目標へ向けての取組の進捗確認を行うことになっています。残念ながら、国連気候変動枠組条約の事務局自身が、現在各国が提出している目標を達成しても二度目標の達成には不十分との報告書をまとめているように、二〇一八年の見直しでは、更なる目標の深掘りが議論になることは明らかです。
我が国も、二〇二〇年に再度二〇三〇年目標を国連に提出しなければならず、二〇一三年度比二六%削減という現在の誠に低レベルの中期目標を高めていくことが不可欠です。
現在の中期目標を引き上げるとともに、継続的に目標を達成して目標の上積みを行っていくことを国内的に担保する法制を整備すべきだと考えますが、環境大臣の見解をお伺いします。
パリ協定を化石燃料時代の終えんと評したのはイギリスのガーディアン紙でした。しかしながら、日本では石炭火力がまだまだ終えんを迎える状況にありません。石炭火力設備の新設計画が現在四十八基、約二千三百万キロワットあります。これは、エネルギー基本計画の電力構成をも大きく上回るものです。
高効率の石炭火力でも従来型LNG火力の約二倍のCO2を排出します。家庭や企業がいかに温室効果ガスの排出削減の努力をしても、その基となる電気がCO2を多く排出するものであれば、努力は水泡に帰すことになります。石炭火力の比率を低減させることについて、環境大臣及び経済産業大臣の認識を伺います。
二〇三〇年度の中期目標において、再生可能エネルギーは電源構成の二二―二四%とされています。その内訳を見ると、風力発電が一・七、太陽光発電は七%にすぎません。
他方で、日本風力発電協会は約八・五%相当の発電量を二〇三〇年の目標としており、日本太陽光発電協会も一二・二%相当を導入目標としています。各業界団体が導入可能としている量を大幅に下回る水準を目標としているのはなぜなのでしょうか。経済産業大臣にお伺いします。
国際再生可能エネルギー機関は、世界の再生可能エネルギーの割合を倍増させると、二〇三〇年に一兆三千億ドルの経済効果を生み、経済成長を最大一・一%押し上げる、雇用創出効果は二千四百四十万人との試算をまとめています。日本においても、GDPを最大三・六%押し上げる効果がある上、化石燃料の輸入が減るため、貿易収支の改善にもつながると見込まれています。
FITの改善による認定の推進、送電網の早急な整備、系統連系の強化を進めることが必要です。再生可能エネルギーの導入目標の見直し、具体的な推進策について、経済産業大臣に伺います。また、CO2削減のために世界的な開発競争になっているCCS、二酸化炭素回収・貯留技術の実用化について、その見通しをお聞かせください。
脱炭素社会への変革は、新たなビジネスチャンスとなっています。今年の初めに、アメリカ、ブルームバーグ・ニューエナジー・ファイナンスが、二度目標達成のために今後二十五年間で十二兆一千億ドルの投資機会が生まれるとの報告書を出しました。
また、二〇一一年、アメリカの大学でスタートした化石燃料多用企業からの投資撤退というダイベストメントという動きが急速に広がっています。世界中の五百以上の企業、金融・保険機関、政府年金基金、機関投資家が参加しており、それらの保有資産は約四百兆円に上るといいます。有名なところでは、アクサ、バンク・オブ・アメリカ、シティ、ロスチャイルド財団等々です。
さらには、今年、世界資源研究所が、二〇〇〇年以降、アメリカやドイツ、スイスなど二十一か国が経済成長を果たしています、そして同時にCO2の排出量を削減したと発表しました。いわゆるデカップリングが現実のものとなっています。
世界は二度目標のパリ協定をめぐって大転換期に入っており、このままでは日本は取り残され、ビジネスチャンスを失うことさえ危惧されます。これらの世界の変化をどう受け止めているのか。環境大臣、経済産業大臣、お答えください。
以下の演説の内容をお聞きください。これは、民主党の政権発足直後、二〇〇九年国連気候変動サミットで、当時の鳩山総理が世界の首脳からスタンディングオベーションで迎えられたものです。いわく、もちろん、我が国のみが高い削減目標を掲げても、気候変動を止めることはできません。世界の全ての主要国による公平かつ実効性のある国際枠組みの構築が不可欠です。全ての主要国の参加による意欲的な目標の合意が、我が国の国際社会への約束の前提となります。
当時、アメリカは京都議定書から離脱しておりました。中国もインドも削減目標を持ちませんでした。この全ての主要国への参加へのメッセージは、その年のコペンハーゲンでのCOP15での徹夜の交渉、翌年のカンクン合意につながりました。そして、その枠組みが現在のパリ協定に結実してまいりました。
この国連演説草稿の作成に関わり、COP15では政府代表として交渉に加わった者の一人として、現在の政府の対応には深い失望を持たざるを得ません。
気候変動問題への積極的な取組は、クリーンなエネルギー技術など、世界経済の新たなフロンティアと新規の雇用を提供します。高い技術開発のポテンシャルと資金力を持っている我が国が、自ら率先して削減目標を掲げ、革新的技術を生み出しつつ、その削減を実現していくことこそが国際社会の中で求められている役割だと認識しています。
我が国の国民、企業の能力の高さを私は信頼しています。国民も企業も、そして私たち政治においても、産業革命以来続いてきた社会構造を転換し、持続可能な社会をつくるということが次の未来の世代に対する責務であると考えています。
民進党は、二〇三〇年に一九九〇年比温室効果ガス三〇%削減、二〇三〇年再生可能エネルギー三〇%以上導入、そして二〇三〇年代原発再稼働ゼロを目指しています。日本を世界一の環境技術立国として地球環境問題の先頭に立つ国にしたいと考えています。
二〇五〇年の将来に新たなライフスタイルを構築した社会になっているか、気候変動による異常気象にさらされる世界となっているか、今の我々の世代の政治に懸かっています。
IPCCを始めとする科学は温暖化に対してほぼ結論を出した、あとは政治の決断だけだ、国際会議のたびに言われるこの言葉を紹介し、気候変動問題については、与野党関係ありません、我が国の国益、そして世界の環境問題のために、それぞれの議員の皆さんに御尽力いただくことを期待して、私の質問を終わりたいと思います。
ありがとうございました。(拍手)
〔国務大臣岸田文雄君登壇、拍手〕
○国務大臣(岸田文雄君) 我が国によるパリ協定の締結手続についてお尋ねがありました。
我が国はパリ協定を重視しており、迅速な締結が不可欠であると考えています。このため、政府は、パリ協定の署名が開放された当日である四月二十二日に署名を行いました。
また、本年五月のG7伊勢志摩サミットにおいては、本年中のパリ協定の発効との目標を掲げるG7首脳宣言を議長国として取りまとめ、パリ協定の早期発効を目指す立場を積極的に示してきました。
そして、この本年中の発効との目標を念頭に置き、臨時国会での提出を目指してきました。具体的には、パリ協定の国内実施の担保に係る検討を進めるなど、可能な限り迅速に作業、調整を行った上で、臨時国会の審議日程の見込み等を踏まえ、十月十一日に閣議決定を行ったところです。
政府としては、COP22の開催を念頭に置き、一日も早く国会の承認をいただけるよう全力を尽くしてまいります。
パリ協定に関する各国の動向と発効の見通しに関する政府の評価についてお尋ねがありました。
本年九月の米中によるパリ協定締結につき、政府としては、それに先立ち米中による気候変動に対する積極的な姿勢が示されてきたことを含め、不断に情報を収集してきたところですが、外交上の具体的なやり取りについてはお答えは差し控えます。
インド、そしてEU等各国の動向についても注視をしてきましたが、当初、全加盟国が一括して締結することにより来年以降の締結を目指していたEUが、一部加盟国のみ先行して締結したこと等により、当初の見通しよりも早期の発効に至ったこと、これは事実です。
我が国はパリ協定を重視してきており、締結に必要な作業を進めてまいりました。具体的には、本年四月のパリ協定の署名開放当日に署名を行い、また、本年五月には本年中の発効との目標を掲げたG7首脳共同声明を取りまとめました。その後も協定の国内実施の担保に係る検討を行うなど、可能な限り締結に向け作業を行ってまいりました。
政府としては、一日も早い締結に向け、国会での御承認をいただくべく全力を尽くしてまいります。
そして、国連気候変動枠組条約締約国会議、COP政府代表団への市民代表の参加についてお尋ねがありました。
気候変動の分野において、NGOを始めとする市民代表が果たす役割は重要です。政府は、これら市民代表との対話を進め、政策的助言を受けながら、COPを始めとする気候変動関連の交渉に臨んでいます。
具体的には、政府は毎年COPの際に、事前並びに開催期間中にNGOや経済団体等との意見交換を頻繁に行っています。また、COP期間中、日々の交渉に関する動向や今後の見通し等について情報共有を行うために開催をしている政府代表団会議にもオブザーバーとして出席をいただいています。
政府代表団への参加の可能性を含め、市民代表の関与の在り方について検討をしつつ、今後も気候変動分野で重要な知見を有する市民代表との対話を維持強化し、そして交渉に臨んでまいります。(拍手)
〔国務大臣世耕弘成君登壇、拍手〕
○国務大臣(世耕弘成君) 福山議員にお答えをいたします。
新潟県知事選挙の結果についてお尋ねがありました。
米山氏の当選は、新潟県の有権者の皆様が選んだ結果と受け止めております。これから機会を見て新知事のお考えもしっかりと伺い、協力をしながら新潟県の発展に力を入れていきたいと思っております。
なお、原発の再稼働については、いかなる事情よりも安全性を最優先し、高い独立性を有する原子力規制委員会が科学的、技術的に審査をし、世界で最も厳しいレベルの新規制基準に適合すると認めた原発のみ、その判断を尊重し、地元の理解を得ながら再稼働を進めるというのが政府の一貫した方針です。
長期戦略の検討プロセスについてお尋ねがありました。
経済産業省では、本年七月に産官学から成る長期地球温暖化対策プラットフォームを立ち上げ、国内投資の拡大、我が国の有する優れた技術を生かした世界全体での排出削減への貢献、そして大幅な排出削減を可能とするイノベーションの創出など、経済成長と両立する地球温暖化対策の在り方について、年度内の取りまとめに向け検討を進めているところです。
政府全体での長期戦略の取りまとめにおいても、関係省庁とよく連携し、産官学、そして国民の皆様から広く知恵を求めていくことが重要と考えており、パブリックコメントなど幅広く御意見をいただくプロセスを取り入れながらしっかりと検討していくものと承知をしております。
石炭火力の比率の低減についてお尋ねがありました。
まず、全ての面において完璧なエネルギーはない中で、3EプラスS、すなわち安定供給、経済効率、環境適合、安全のバランスが取れた電源構成が重要です。石炭火力は、他の電源と比較して、CO2を多く排出するという環境面での課題があるものの、安定供給や経済性の観点から優れており、一定の割合での活用を図っていくことが不可欠です。
政府としては、本年新たに導入した省エネ法、高度化法による仕組みも活用することにより、二〇一四年度の石炭火力の比率三二%を二〇三〇年度時点で二六%に低減させていくことを目指していく方針です。
風力及び太陽光の導入目標量についてお尋ねがありました。
電源構成を考えるに当たっては、例えば火力や原子力を含めた各電源をめぐる動向や電力需要の見通しなど様々な要素を踏まえて、全体として検討を行う必要があり、一つの電源ごとに検討すべきものではありません。我が国が、我が国のエネルギーミックスで示した再生可能エネルギー導入比率二二から二四%という水準は、導入拡大の余地が大きくない水力の八%を除けば、足下の四%から四倍も導入拡大するという野心的な目標であり、決して低い水準ではないと考えております。
再生可能エネルギーとCCSについてお尋ねがありました。
エネルギーミックスで示した我が国の再生可能エネルギーの導入比率は極めて野心的なものであり、決して低い水準ではないと認識をしております。再生可能エネルギーの最大限導入と国民負担の抑制の両立に向けて本年五月に固定価格買取り制度の見直しを行ったところであり、あわせて、技術開発、規制改革、送電網の増強など様々な施策を総動員して、まずはこの水準の実現に向け、再生可能エネルギーの導入拡大に取り組んでまいります。
CCSはCO2排出を抜本的に削減できる可能性がある一方で、コスト面や技術面での課題が指摘をされております。経済産業省では、海外での導入事例も参考にしつつ、二〇二〇年頃の技術の実用化を目指して、今年四月からCO2を貯蓄する実証実験を開始するとともに、分離回収コストの低減に向けた研究開発、さらにはCO2を貯蓄可能な地層を特定するための地質調査等に取り組んでいるところであります。
温暖化対策をめぐるビジネスの世界の変化の受け止めについてお尋ねがありました。
パリ協定では、気温上昇を二度より十分低く保持すること等が目的とされており、環境・エネルギー制約の克服に資するビジネスの成長への期待は国際社会において中長期的に高まっていくものと考えております。
経済産業省としても、地球温暖化対策と経済成長の両立を目指し、イノベーションによる解決を最大限に追求するとともに、国内投資を促し、国際競争力を高め、長期的、戦略的に取り組んでまいります。(拍手)
〔国務大臣山本公一君登壇、拍手〕
○国務大臣(山本公一君) 福山議員にお答えをいたしたいと思います。
新潟県知事選の結果についてお尋ねがございました。
自治体の選挙の結果でありまして、独立性の高い三条委員会として原子力規制委員会を所掌する環境大臣としてはコメントを差し控えさせていただきたいと思います。
次に、パリ協定における長期目標の達成に向けた決意についてお尋ねがございました。
パリ協定においては、世界共通の長期目標として二度C目標を設定するとともに、一・五度Cに抑える努力を追求するとされております。
これを踏まえまして、我が国としては、地球温暖化対策計画において、二〇三〇年度二六%削減に向けた対策、施策を示すとともに、二〇五〇年度までに八〇%の温室効果ガスの排出削減を目指すことといたしております。同計画に基づく政策を総動員いたしまして、パリ協定の目標の達成に向けて、我が国として貢献していく決意でございます。
長期戦略の策定プロセスの市民参加についてお尋ねがございました。
現在、中央環境審議会において、長期低炭素ビジョンについて御議論をいただいております。市民団体を含む様々な関係者等からのヒアリングをしつつ、年度内めどに一定の取りまとめをし、政府全体での長期戦略策定に関する議論の土台といたしたいと考えております。
我が国は、伊勢志摩サミットで、二〇二〇年の期限に十分に先立って長期戦略を策定し提出するとコミットしております。関係省庁とも連携しつつ、広く国民の意見を聞きながら、長期戦略の早期提出に努めてまいります。
中期目標の引上げと法整備についてお尋ねがございました。
地球温暖化対策推進法において、少なくとも三年ごとに地球温暖化対策計画に定められた目標及び施策について検討を行い、必要に応じて見直すことといたしております。目標の検討や見直し等については、こうした枠組みが措置されており、今後適切に対応してまいります。
石炭火力発電についてお尋ねがございました。
CO2排出量の多い石炭火力発電の新増設が進むと、国の削減目標等の達成が危ぶまれます。このため、本年二月の環境、経産両大臣の合意に基づき、政策的対応等を行うとともに、毎年度その進捗状況をレビューすることといたしております。また、両省の合意以降、石炭火力発電の環境アセスメントにおいて、事業者が省エネ法の発電指標を達成できないと判断した場合には事業の見直しを検討すること等を含む環境大臣意見を述べています。これらの取組を通じて、二〇三〇年二六%削減に向け、しっかりと取り組んでまいります。
脱炭素社会への変化をめぐるビジネス等の世界の潮流についてお尋ねがございました。
世界では、気温上昇を二度以内に抑える目標を掲げたパリ協定を受けて、様々な動きがビジネスや金融の世界でも拡大していると承知をいたしております。
環境省としましては、そうした世界の潮流も踏まえて、環境、社会、ガバナンスに配慮した、いわゆるESG投資を我が国に広げていくための情報発信や環境情報の開示システムの整備に取り組んでおり、今後とも企業の環境配慮行動を促進するための取組を進めてまいります。(拍手)