04/10
2014
第186国会 参議院 外交防衛委員会 2014年4月10日
○福山哲郎君 おはようございます。福山でございます。よろしくお願いいたします。
今日は、私、持ち時間が少ないのでもう早速行かせていただきます。
国家安全保障戦略、いわゆるNSS、新防衛大綱についての議論でございますが、この新大綱、NSSは、御案内のように国家安全保障会議によって策定をされて、NSCの司令塔機能の下、政治の強力なリーダーシップによって、政府全体としての国家安全保障施策を実施をするというふうになっております。これは、日本の安全保障戦略上は画期的なことだというふうに思っております。
しかしながら、残念ながら、安全保障について議論するこの外交防衛委員会に所管の官房長官が御出席をいただけません。今日は、お忙しい中、官房副長官にお越しをいただきましたが、過去の例で、防衛大綱等についての審議では官房長官は出ないという議論がありましたが、それは全く違います。なぜなら、NSCを鳴り物入りでつくり、NSCで策定をしたものが、その所管の官房長官が出てこられないというのは、私は甚だ筋が通らないというふうに思っております。これは政府もしっかり検討いただかなければいけないと思いますし、今日は副長官で私は了解をしましたし、野党の先生方にも了としていただきましたが、与党・政府、そして委員長におかれましても、この問題については、これから先、日本の安全保障上の問題が生じたときに大変大きな課題になってくると思いますし、問題になってくると思いますので、そのことについて、まず官房長官に御出席いただけるように御努力、今後いただけるかどうか、副長官、お答えいただけますか。
○内閣官房副長官(世耕弘成君) 基本的には、委員長、理事会で御協議をいただいて決めていただくことだというふうには思っております。
○福山哲郎君 いや、だから、都合のいいときには鳴り物入りで、都合が悪くなったら委員長、与党で、政府で、国会でと言うんだったら、逆に言うと、委員長並びに自民党の国対の皆様にも、このことについては、どちらが例えば与野党替わったって同じです、日本の安全保障について議論するのは。ルールとして、そこはしっかり議論させてもらわないといけない。
なぜなら、NSCができて、例えば、今の破壊措置命令も出ているのか出ていないのかよく分からない。NSCは開かれている形跡はない。また、北朝鮮のミサイル発射について、すぐに発表したと思えば十七時間後に発表したこともある。いろんな課題が実はNSCを中心に出てきているわけです。ウクライナ情勢もしかりです。そのときにどんな議論をしているのか、今の状況では議事録も出てこない。そして、官房長官もこの外交防衛委員会に出てきていただけないということになると、本当に全てがブラックボックスに入ってしまうと。もちろん、防衛大臣、外務大臣は懸命に御答弁いただいていると思いますが、しかし、そこは責任のある官房長官として御出席をいただけるように、これはもう政府・与党に強く要請をして、次の質問に行きたいというふうに思います。
そんな状況の中で、アメリカのQDRが発表されました。そして今、年末に向けて、御案内のように、ガイドラインが策定をされています。もう見直しについて事務方では協議が始まっています。外務大臣、防衛大臣は真摯に御答弁いただいて、この委員会で何度も、現行の法体系、法解釈の中で検討を行っていると明確に御答弁をいただいています。
しかし、今回、集団的自衛権の一部限定容認論や法律を個別に出すやの話があちこちで飛び交っております。具体的にこのような議論が出ている中で、なぜNSSと新防衛大綱を去年の十二月の時点で策定したんでしょうか。ガイドラインの策定が今年の年末だということは分かっていたはずです。そして、この集団的自衛権の問題の決着も仕掛品のままでこのプロセスがいくということは、僕は、非常に自衛隊の部隊運用としては問題だと思います。ガイドラインは、まさに日米の協力体制を確立し運用していくものです。現場の部隊としては、こういう、ある意味でいうと集団的自衛権の行使容認か容認ではないかという議論が飛び交っている中で、一体どのことを起点に日米のガイドラインの見直しをするのか等々について混乱をするし、現場としても非常に私は混乱を来すことを懸念をしております。
このことについて、何で、じゃ、この一連の議論が決着した後に防衛大綱やNSSを作らなかったのか、そして、今のこのガイドライン策定見直しの中でこういった状況になっていることについてどういう認識なのか、副長官並びに防衛大臣にお答えいただきたいと思います。
○内閣官房副長官(世耕弘成君) 御指摘の点でございますけれども、なぜ国家安全保障戦略を定めるときに集団的自衛権の議論、日米ガイドラインの議論を待たなかったのかという点だと思いますけれども、現在、日本を取り巻く安全保障環境が非常に厳しさを増しております。大量破壊兵器とか弾道ミサイルの脅威、非常に深刻度を増しています。あるいはサイバー攻撃のような新しい脅威も増大をしてきています。
そういう中で、日本一国のみでは自国の平和と安全を守ることはできない、国際社会と協力をして地域や世界の平和を確保していくことが非常に不可欠であるということ、そして、そのような認識の下、我が国の国益を長期的視点から見定めた上で、国家安全保障のための方策に取り組んでいくための国家安全保障に関する基本的方針をしっかり示した上で、日本の領土、領海、領空を断固として守り抜くため、今後の我が国の防衛の在り方に関する新たな指針を示すとともに、特に我が国が保有すべき防衛力の水準の達成に早急に着手すること、これが急務であるというふうに考えて、去年の十二月に国家安全保障戦略、そして防衛大綱、中期防を策定をさせていただいたところであります。
一方で、集団的自衛権と憲法の関係については、これは有識者の会議でしっかり議論をしていただきたい。我々は、いろいろ今情報が飛び交っているという御指摘がありましたけれども、あくまでも、政府としては今その答えを、報告書が出てくるのを待っているという状況であります。
○福山哲郎君 いや、今副長官がおっしゃられたサイバーの話も弾道ミサイルの話も周辺環境の悪化の話も、いわゆる尖閣の問題も含めて、我々の防衛大綱にも、二二大綱にもしっかりと言及をされています。より悪化をしたというのなら、自民党政権でより悪化をさせたということでしょうか。よっぽど悪化をしたということでしょうか。
つまり、私は、防衛大綱についてこの間の参考人質疑でも一様に評価をいただいたと思います。それは評価をされて当然なんです。現下の状況について、我々の二二大綱に多少文言を変えただけのものですから、そこを、何かを言えば二言目には今の安全保障環境は厳しい、厳しいと言ってオオカミ少年のように危機をあおり、そして、このことの議論を進めることに対する非常に定性的な議論が多いことについて私は非常に懸念をしております。なぜこの時期に作ったかについてもはっきり分かりませんし、じゃ、ガイドラインの見直しについてどのような影響があるかについても、今、副長官の答弁では全くない。
この防衛大綱とNSSは現行法体系の下に作られているということで、副長官、よろしいですね。
○内閣官房副長官(世耕弘成君) そういうことだと思います。
○福山哲郎君 そうすると、私は、事の是非はともかくとして、この集団的自衛権の限定容認とかなんとかという議論が一定の決着を見た状況のところでは、またNSSや新防衛大綱、ガイドラインをもう一回作り直す作業をするおつもりなんですか。
○内閣官房副長官(世耕弘成君) まだ懇談会から報告書が出てきていない段階でありまして、その報告書がどういう内容か分からない前提では、私としては、これが国家安全保障戦略やガイドラインにどういう影響を与えるかということはちょっとお答えをすることはできません。いずれにしても、懇談会の議論を待ちたいというふうに思っております。
○福山哲郎君 防衛大臣、現場の部隊を預かる大臣として、この状況でアメリカともガイドラインの見直しを交渉している、一方では別の議論が、自衛隊のオペレーション、運用上のオペレーションで変わるかもしれない議論がされている。これ、現場としては非常に混乱をすると思いますが、防衛大臣はどのようにお考えですか。
○国務大臣(小野寺五典君) 防衛省としましては、憲法の範囲の中で、我が国の法体系の中で許される範囲で我が国の防衛をしっかり守るための様々な施策に取り組んでおります。
今後とも、私どもとしては、政府全体の考え方の中で防衛力整備に努力していきたいと思っています。
○福山哲郎君 今、非常に微妙な表現をしました。憲法の中でと言っているということは、防衛大臣、現状の憲法解釈、法体系の中でということですね。その後、微妙に、政府全体の中でと言って、実は、今、ダブルスタンダードの答えをされた。
今の法体系、解釈の中でガイドラインの交渉も含めてやっているという今までの答弁と同じということでよろしいですね。
○国務大臣(小野寺五典君) 今までと方針は変わっておりません。
○福山哲郎君 安保法制懇の議論を待つというのは、私、何度聞いたかよく分からないんですけど、これ、総理にも聞きましたが、はっきり分からないのでもう一度聞きます。
安保法制懇が直近で開かれたのは、副長官、いつですか。
○内閣官房副長官(世耕弘成君) いわゆる安保法制懇が懇談会として集まって開かれたのは、直近では、今年の二月四日に第六回の会合として開催をされているというふうに認識しております。
○福山哲郎君 この間も申し上げましたが、もう二か月近くもやっていないんですよ。安保法制懇の議論を待って、議論を待ってと言うけど、一体どこで何やっているんですか。全く見えないですよ。これ、国民の生命と財産に関わる大変重要な課題なんです。そして、政府は二言目には安保法制懇の議論を待ってと言っているのに、安保法制懇は二か月やられていないんです。全く不透明。
そして、総理がこの間突然テレビに出られて、議論を待つと言いながら、必要最小限の中に含まれる集団的自衛権もあるのではないかと、これは安保法制懇の中でも主流的な議論になりつつあるって、どこで議論になりつつあるんですか。一体どこでやっているんですか。これは総理はどこで確認したんですか。副長官、お答えください。
○内閣官房副長官(世耕弘成君) 恐らく、総理は懇談会に毎回、過去六回出席をされておりますので、その中の議論を聞いておられて総理なりに認識をされたんだというふうに思っております。
○福山哲郎君 副長官、状況によっては、私、委員会止めますよ、今日は。
私は、安保法制懇の議事要旨見ました。二回しか砂川判決について出てきていません。それもポジかネガか分からない答弁です、答弁というか意見です。それも飛び飛びです。砂川判決について集中的に議論された様子は全く見受けられない。そして、二か月、安保法制懇は全く懇談会開かれていない。どこに議論が主流になるんですか。
なおかつ、高村副総裁がこの話を持ち出されましたけれども、安保法制懇とは別のところの議論です、それは。安保法制懇の議論を待ってと言っているのに、安保法制懇開かれていないのに、主流になっているかどうかなんか誰も外から見えない、国民から見えないのに、それで総理が突然テレビに出て、主流になっている。まして安保法制懇で報告書も出ていないのに、こういった発言をそれもテレビでされる。私は大変問題だと思いますが、副長官、どう思われますか。
○内閣官房副長官(世耕弘成君) 主流的な議論になりつつあるというのは、総理自身がそう感じられたんだろうと思います。
二月六日に安保法制懇が開かれて以来開かれていない、第六回目が開かれて以来開かれていないというのは事実であります。ただ、総理は、そのテレビの中でも、最後の、主流的な議論になりつつあると思っていますということを言った上で、その後、いずれにせよ、この安保法制懇の結論が出た段階において政府としては法制局を中心に議論を進めていますし、与党、自民党、公明党ともよく相談をしながら、最終的に解釈の変更が必要となれば、与党との協議を経て閣議決定によって変更するということになると考えていますと。あくまでも留保条件を付けておりますから、あくまでも総理自身が、福山委員はその議事録を読まれてそんな結論が主流とは思わないと思われているかもしれませんが、総理は何らかの形で主流だというふうに感じたんだろうと思います。
ただし、それは結論ではなくて、総理は感じただけのことをテレビでおっしゃって、あくまでも法制懇の結論がしっかり出てから政府としての方向性を示していくということを明確におっしゃっているというふうに思っております。
○福山哲郎君 いや、だから、法制懇、議論されていないじゃないですか。やっていないんだよ。やっていないのに議論もくそもないでしょう、報告書もくそも。どこから出てくるんですか。どこから出てくるんですか、誰が作るんですか、それじゃ。それで、国民に全く見えないところで法制懇の報告書だけがぽっと出てくるんですか。
それから、総理が二月四日までの議論を聞いてと言うんだったら、私、今日、事実関係確認しますが、本当にこの砂川判決の議論が出たときに総理が出席していたかどうか確認しますよ。途中退室もしているはずですから。
つまり、理屈合わないんですよ。それで、そこまで主流になりつつあると言うんだったら、議事録公開しないと国民に対して筋が通らない。今みたいな議事要旨では筋が通らない。どこで今何をやって、どういう形で報告書を策定しているのか、じゃ、言ってみてください。
○内閣官房副長官(世耕弘成君) 二月四日、第六回の会合以降は、現在は懇談会の委員の間でそれぞれ詰めの議論を行っていただいているところだと思います。それで、その進捗状況を踏まえて、しかるべきタイミングで次回の懇談会が開かれるというふうに認識をしております。
○福山哲郎君 詰めの議論って何ですか。詰めの議論って何ですか。詰めの議論というのは、どういう場でいつ誰がどのようにやっているのかはっきりしないと、これ、審議できないですよ。おかしいよ。懇談会の報告書を待っていると言っているのに、懇談会、まともに表ではやられていない。どこかでやっているということは、裏でやっているということじゃないか。いつやったかはっきりできますか、それじゃ。
○内閣官房副長官(世耕弘成君) 当然、これは別にこの懇談会だけじゃなくて、例えばいろんな審議会とかで物をまとめるときというのは、委員の間でいろんなすり合わせとかそういうことが行われるというのは、これは普通だと思います。今回は非常に重大な案件でもありますから、委員の間でいろんな意見の調整が行われているんだろうと思います。それを何も黙って出すわけではなくて、それがある程度詰まった段階でもう一回懇談会が開催をされるというふうに私は認識をしております。
○福山哲郎君 いや、それは良くないと思いますよ。ちゃんとその議論のプロセス見せないと、国民に、重要な問題なんだから。委員の中で調整していると、委員の中で調整しているプロセスが重要なんでしょう。どういう意見が出て、誰がどんな発言をして、その中で説得できるかどうかが重要なんじゃないんですか。
今、副長官が詰めの議論をしていると言ったのは大問題ですよ。全部アンダーグラウンドでやっているということですよ。国民に見せていないということですよ。詰めの議論のプロセスを見せないと透明性、全然確保できないじゃないですか。国会にその詰めの議論を出してもらわないと、国会でも議論できないじゃないですか。二言目には安保法制懇の報告書を待っている待っているでは、それではできないでしょう。どうですか、副長官。
○内閣官房副長官(世耕弘成君) そこは福山委員と私、ちょっと見解が違ってくるんですけれども、こういうものをまとめるときというのは、平場でもちろんちゃんと議論することも重要ですけれども、文言のすり合わせとか、そういうことを恐らく報告書へ向けてやっておられるんだと思います。そういう作業は私はあってしかるべきだと思います。
しかし、それを何も黙ってぽんと出すわけではなくて、もう一度ちゃんと懇談会へ出して、きちっとした結論として国民の皆さんに公開をされるわけでありますから、その上でその報告書について議論をしていただければいいというふうに思っておりますので、私は、ここはちょっと見解が異なるかも分かりませんけれども、何も全て、どの委員とどの委員が電話で話したとか、いろいろあると思うんですね、そういうことまで公表という話には当たらないというふうに思っております。
○福山哲郎君 私は、電話で話した内容まで出せとは言っていません。詰めの詳細な議論をしている中で当然積み上がっている議論があるから、それはちゃんと、懇談会開くなら開くで、途中の状況をちゃんと示さなきゃいけないでしょう。五十日も一度も懇談会をやらないというのはおかしいでしょう、それは、どう見たって。
それで、詰めのことを知っているから主流になりつつあると言っているわけでしょう。あなた、さっき二月の四日の議論でと言ったんだからね。あなたは、二月の四日の議論で総理は主流になりつつあると……(発言する者あり)いや、言ったんだからね、議事録で。あなたはそう言ったんだから。そうしたら、その後、詰めの議論を委員間同士でしています、議員同士でしていますと。ここの整合性はちゃんと取らなきゃいけないと私は思いますよ。
問題は、砂川判決です。私は、今日いらっしゃいますけれども、山口公明党代表が言われた、日米安保体制や自衛隊が合憲、違憲とかいう論争の中で下された判決であり、集団的自衛権を視野に入れた判決だと思っていないという判断を、私もそのとおりだというふうに思います。
砂川判決は一九五七年に出ています。よく言われていますが、法制局の集団的自衛権の行使に対する見解はその後に出ております。小松長官は、安保法制懇の議論が出るまでは、先ほどの議論のとおり、今の日本の法解釈そして法体系の中で、安倍政権は変わらないと言われています。
現状のこの砂川判決についての法制局の見解についてお述べください。
○政府特別補佐人(小松一郎君) 政府が繰り返し明らかにしてきております従来の憲法第九条の解釈のポイントでございますが、これは、煎じ詰めれば、いわゆる自衛権発動の三要件を充足する場合を例外として、憲法第九条は武力の禁止を禁止しているというものでございます。このポイントに照らせば、集団的自衛権を行使することは、この三要件のうちの第一要件、すなわち我が国に対する急迫不正の侵害があること、すなわち我が国に対する武力攻撃があることを満たしておらず、憲法第九条上、許容されないということでございます。
ところで、砂川事件でございますが、旧日米安保条約行政協定に基づく刑事特別法の合憲性が争われた事案でございまして、この最高裁判決の結論を一言で申し上げれば、旧安保条約が一見極めて明白に違憲無効であるとは言えない以上、刑事特別法も違憲ではないというものでございます。
なお、この判決の中に、我が国が主権国として持つ固有の自衛権と憲法第九条との関係について、我が国が自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとり得ることは、国家固有の権能の行使として当然のことであるという考え方が示されておりますが、これは、冒頭私が申し上げました、従来からの政府の見解の基盤にある基本的な考え方と軌を一にするものであると考えてございます。
○福山哲郎君 全くそのとおりです。
実は、集団的自衛権の行使で、私、全部、法制局長官の砂川判決との関係の議事録を確認しました。何か所かありました。
まさに集団的自衛権の行使の問題で、大森当時の法制局長官が言われたのは、池田外務大臣が集団的自衛権の行使ができるのではないかという質問に対して、集団的自衛権の行使は認められないという憲法解釈を変えろという、変えてもいいのではないかというふうな議論に展開するのでございましたら、そこのところは私どもはそういった憲法解釈を変える意図はない、そういった集団的自衛権の行使は認められないという解釈の下で、そしてその現行憲法の枠内でガイドラインの見直し等の作業も行っておると、そういうことでございます。これ、当時の池田外務大臣です。これはまさに九七年のガイドラインの策定の議論の中で起こったことです。その直後の同じ委員会の同じ流れの答弁で、大森法制局長官が、憲法の解釈について、いわゆる政策上の必要性によって変更するということは困難ですということをはっきりと言われています。これは一つ、集団的自衛権とガイドラインと憲法の解釈を変更することに対する考え方です。
この同じ大森法制局長官が、九九年、砂川判決について議論をされています。これは有名な最高裁判所の砂川事件判決においても確認しているところでございます。これはいわゆる個別的自衛権の問題です。次です。確認しているところでございます。したがいまして、我が国に対して武力攻撃があったという場合におきまして、平和と独立を維持回復するために、すなわち換言しますと、我が国を防衛するために必要最小限の実力を行使する、またそのための裏付けとなる自衛のための必要最小限の実力を保持するということは、もとより憲法の否定するところではない、このように解しているところでございますと言っています。つまり、まさに個別的自衛権の問題について砂川判決を引き合いに出して大森法制局長官は当時答弁をされています。
この大森法制局長官が、先ほど申し上げたように、ガイドラインの見直しと集団的自衛権の行使の質問に対して、憲法の解釈変更はできないということをはっきり答弁をされています。
小松長官、このことについて否定はされないし、現状の法制局の立場はこの立場で間違いないというふうにお答えいただけますか。
○政府特別補佐人(小松一郎君) これは度々御答弁申し上げておりますけれども、現時点における安倍内閣の憲法九条に対する解釈は従来どおりということでございます。
○福山哲郎君 それなら、あなたが何回もこの委員会で答弁をされた、設置法に基づいて、法律問題に関し、内閣並びに内閣総理大臣及び各省大臣に対し意見を述べることとあります。今の砂川判決を集団的自衛権の行使を認めるに足るというような議論が出ていることに対して、あなたは、設置法に基づいて、これまで内閣法制局としてはこういう答弁をしていましたと、これ、総理大臣に設置法に基づいて助言をするべきではありませんか。
○政府特別補佐人(小松一郎君) お答え申し上げましたとおり、砂川事件は、旧安保条約行政協定に基づく刑事特別法の合憲性が争われた事案でございますが、その最高裁判決が我が国が主権国として持つ固有の自衛権と憲法第九条との関係について考え方をお示しになっていると、先ほどちょっと読み上げたところでございますが、この考え方は従来からの政府の基本的な考え方と軌を一にするものでございます。
安保法制懇から報告書が出されまして、私どもがその意見を述べろという局面が来るといたしましたら、こういうことを十分に踏まえて意見を、恥ずかしくない意見を申し上げるという必要があると思っております。
○福山哲郎君 具体的に、小松長官、砂川判決については、あなたも今はこの大森法制局長官の答弁と同じ立場だということをここで言明いただけますか。
○政府特別補佐人(小松一郎君) 御質問の趣旨が必ずしも私理解できたかどうか分からないわけでございますが、この砂川事件の最高裁判決は何を言っているのかということはもう繰り返し御答弁をしているところでございまして、その上で、いろいろな報道の中で、これが集団的自衛権の行使を認めたものであるのかどうかという議論が行われているということは承知しております。
この砂川事件の判決については、今もう既に申し上げたとおりでございまして、これ以上でもなければこれ以上でもございませんので、内閣法制局としてこの判決をそれ以上に解釈をして何かを述べるという立場にはございません。
○福山哲郎君 解釈しろなんて一言も言っていない。小松長官として、今の内閣法制局の立場として、この大森法制局長官の立場でよろしいということを小松長官として言ってくださいと申し上げているんです。
○政府特別補佐人(小松一郎君) 既に申し上げましたとおり、砂川事件は、旧日米安保条約行政協定に基づく刑事特別法の合憲性が争われた事案であり、この最高裁判決の結論を一言で言えば、旧安保条約が一見極めて明白に違憲無効であるとは言えない以上、刑事特別法も違憲ではないというものでございます。
なお、この判決の中に、我が国が主権国として持つ固有の自衛権と憲法第九条との関係について、我が国が自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとり得ることは、国家固有の権能の行使として当然のことであるという考え方が示されてございます。これは、何度も申し上げました従来からの政府の憲法九条の解釈に関する見解の基盤にある基本的な考え方と軌を一にするものでございます。
○委員長(末松信介君) 福山哲郎君、確認の意味でもう一度質問してください。
○福山哲郎君 基盤であるというのは非常に微妙な表現です。基盤であるではありません。私が聞いているのは、大森法制局長官の言ったこの答弁のとおりで、今の小松内閣法制局長官は従来の解釈、法体系だと言っておられるんだから、これであなたは法制局長官として大森法制局長官の答弁のままでよろしいかどうかを言明してくださいと申し上げているんです。
○政府特別補佐人(小松一郎君) 現時点において、内閣の憲法九条に関する考え方、解釈は従来どおりと申し上げているわけでございますから、大森長官の答弁もその一環でございますので、これは内閣の見解であるというふうに解釈をしております。
○福山哲郎君 内閣法制局の見解ということは、小松長官の見解ということでいいんですね。
○政府特別補佐人(小松一郎君) 現時点について言えばそのとおりでございます。
○福山哲郎君 じゃ、安倍首相がテレビで言われた、砂川事件について集団的自衛権を否定していないのははっきりしているという安倍総理が言われたテレビでの発言は、今の法制局とは異なるということでよろしいですね。法制局の見解とは異なるということでよろしいですね。
○政府特別補佐人(小松一郎君) 私の立場から、内閣総理大臣の発言の一々について、その内容をそんたくして、どういうお考えに基づいて御発言になったかということをそんたくして私の感想ないしその意見を述べるという立場にはございません。
○福山哲郎君 違うんですよ。そんたくしろと言っていない。この発言は法制局の立場と違うということは認めていただけますねと。なぜなら、あなたは内閣や内閣総理大臣に助言するんです、設置法に基づいて。そのことについて明らかにしてくださいと申し上げて、そんたくしろとは一言も言っていない。
○政府特別補佐人(小松一郎君) 砂川事件最高裁判決については、既に繰り返し述べたとおりでございます。これが集団的自衛権の行使を認めるものか否かを含め、内閣法制局として同判決を解釈して何かを述べるという立場にございません。
○福山哲郎君 違う、違う。あなた今何と言った、違うこと言ったんじゃない。もう一回言って、今の答弁。
もう一回今の答弁をそのまんま読んでね。さっきの答弁と違うよ。
○政府特別補佐人(小松一郎君) 砂川事件判決については、旧日米安保条約行政協定に基づく刑事特別法の合憲性があらわれた事案でございまして、この最高裁判決の結論を一言で言えば、旧安保条約が一見極めて明白に違憲無効であるとは言えない以上、刑事特別法……(発言する者あり)
○委員長(末松信介君) 小松長官。
○政府特別補佐人(小松一郎君) も違憲ではないというものであります。
○委員長(末松信介君) 小松長官、先ほど答弁された内容を正確にもう一度伝えてください。
○政府特別補佐人(小松一郎君) 砂川事件最高裁判決については既に述べたとおりでございまして、これが集団的自衛権の行使を認めるものか否かを含め、内閣法制局として同判決を解釈して何かを述べるという立場にございません。
○福山哲郎君 違う、違う。あなた、さっき大森長官のことは政府解釈として一緒だと言ったじゃないか。言ったじゃないか。大森長官は集団的自衛権の問題については砂川判決というのは認めていないんだ。あなた、今、これ答弁異なっているよ。今の聞き捨てならないよ、今のは。ちょっと、ちょっと、これ止めてください。
○委員長(末松信介君) 速記を止めてください。
〔速記中止〕
○委員長(末松信介君) 速記を起こしてください。
前の前の答弁をもう一度お話ししていただけますか。小松内閣法制局長官。
○政府特別補佐人(小松一郎君) 大変恐縮でございますが、大森長官の答弁につきましては、御通告もございませんので、その内容についてあらかじめ私は見る機会がなかったわけでございます。
ただ、繰り返し申し上げておりますように、総理を含めまして、これは閣議決定をした答弁書によりまして、現時点における安倍内閣のこの憲法九条に関する解釈は従来どおりであると、こう述べておられるわけです。
ただ、その上で、法制懇の報告書を踏まえて改めて検討するという部分が付け加わっておりまして、これが内閣の立場でございまして、私は、この大森元長官の答弁について、具体的な文言をあらかじめ御通告ございませんでしたので拝見しておりませんけれども、従来の答弁でございますから、これは従来の内閣の憲法九条に関する答弁は従来どおりであると。
例えば、ほかの委員会でも問題になりましたけれども……(発言する者あり)
○委員長(末松信介君) 御静粛に。
○政府特別補佐人(小松一郎君) ほかの委員会でも御質問を受けましたけれども、角田内閣法制局長官が、ある時点で集団的自衛権の行使を認めようとすればこれは憲法を改正しなければならないと、こういう御答弁をなさっているということがございます。それはどうかという御質問も受けているわけでございます。
それに対して私がお答えしているのは、憲法解釈は従来どおりと申し上げているわけでございますから、現時点では従来どおりでございますと、こう申し上げているわけでございまして、ただし、内閣総理大臣が安保法制懇の結論を踏まえて改めて検討すると申し上げているわけでございますので、その検討の結果がどうなるかということについて……
○委員長(末松信介君) 答弁、もうちょっと簡潔にお願いいたします。
○政府特別補佐人(小松一郎君) 現在予断することはできないわけでございます。(発言する者あり)
○委員長(末松信介君) 座席に着いてください。(発言する者あり)着席してください。
質問者が答弁について納得せねばいかぬということが一つの運営上のルールであると私は理解しています。したがって、福山哲郎委員の質問、今の答弁で御理解できますか。
○福山哲郎君 いや、できないです。だって、最初の答弁と次の答弁違うんです。
○委員長(末松信介君) 再度簡潔に御答弁を。
じゃ、速記を止めてください。
〔速記中止〕
○委員長(末松信介君) それでは、速記を起こしてください。
福山委員が質問をされました。同じ質問を二度されたと思います。答弁、正確に伝えた答弁もう一度伝えてくださいということを申し上げたんですけれども、食い違っているという御指摘がございます。
したがいまして、議事録を精査をさせていただきたいと思います。それでよろしいでしょうか。──いいですか。(発言する者あり)ちょっと黙ってください。いいですか。
それでは、質問を続けられますか。
○福山哲郎君 委員長は公平に議事運営を進めていただいているので、僕は委員長の御努力を多として、ちょっと質問を続けにくいんですけれども、もう一回。
実は、事前通告の話はおかしいです。あなたは何度も、頭の体操で過去の答弁について今勉強しているとおっしゃっているんだから。それと、大森長官というのはまさに今回の集団的自衛権の議論の中では中心的に答弁をされている方です。ましてや、僕は先ほどわざわざ大森長官の議論を紹介をしてあなたに確認をしました。それも砂川判決との関わりについても紹介をして質問をしました。それについて、あなたは何も変わらないと、そのとおりで結構ですと言ったにもかかわらず、その次の答弁では、砂川判決が集団的自衛権についての、何と言われたか分かりませんが、否定をしているかしていないかについて判断できるような状況ではないという類いの発言をされました。
これ、実は全く違う発言なので、しっかりその発言はどうなんですかということを私は確認をさせていただいていたら、何か、また相変わらず長い、関係ない答弁をされたというのが経緯でございます。
本来なら質問をこれ以上続けられないんですけれども、実は、これ肝です。
外務大臣、防衛大臣、さっきの池田外務大臣の発言は、まさに集団的自衛権の……(発言する者あり)
○委員長(末松信介君) 静粛に。
○福山哲郎君 解釈を変更できるかどうかという質疑に対して、それで解釈を変えろ、変えてもいいのではないかというふうな議論を展開するのでございましたら、そこのところは私どもはそういった憲法解釈を変える意図はないと、これはまさに九七年のガイドラインの流れで池田外務大臣が言われて、その次に、実は大森法制局長官が解釈は変えられないと答弁されています。
その大森法制局長官が、九九年にわざわざ砂川判決を持ち出して、個別的自衛権だという議論を展開をされているんです。これ、非常に重要なんです。池田大臣は、御案内のように宏池会の大臣でいらっしゃいます。今日は、防衛大臣も外務大臣も宏池会の御出身。
そして、今月号の「世界」においては、村上誠一郎、今の現職の自民党の議員が、安倍さんがやろうとしていることは三権分立や立憲主義の基本を無視し、それを壊す危険性を持っている、だから反対せざるを得ない、これは右とか左とかではなく民主主義や法律を真っ当に学んだ人間であれば誰でも分かるはずですと言われています。
非常に重たいです。そして、なおかつ、安保法制懇は六十日やられていません。やられていないのに、今副長官は、何か内々で議論しているみたいなことを認められました。そして、総理は総理で突然テレビに出て、何らか主流になっているって、どこに主流になっているんだと。そんなアンダーグラウンドで、密室で誰かが電話でやり取りして、主流なんですか。国民に理解を求めるんじゃないんですか。そして、そのことを確認したら、小松法制局長官は答弁を変えられた。
私は、これ、議事録精査してしっかりと議論を重ねたいと思っておりますが、残念ながら時間がありません。
外務大臣、防衛大臣、今の議論を聞いてどのようにお考えなのか、村上議員の御発言も含めてお答えいただけますか。
○国務大臣(岸田文雄君) まず、九七年、九九年の池田外務大臣、そして大森法制局長官の発言については、政府の方針を述べられたものと理解いたします。
そして、村上誠一郎議員のこうした発言等について御質問をいただきましたが、現在、集団的自衛権とこの憲法の問題を始め、我が国の安全保障に関わる様々な議論が行われております。そしてその中で、与野党問わず様々な立場からそれぞれの見識に基づいて様々な発言が行われています。こうした一つ一つの発言につきましては、我々は尊重しなければならないと思っています。こうした自由な議論が積み重なっていくことによって、丁寧な議論の進め方をこれからも心掛けていかなければならないと考えています。
政府としましては、今後、先ほど来再三申し上げておりますように、安保法制懇の議論を待ち、そして最終的な報告書が出された後、政府としましては、与党ともしっかり議論を重ね、そして政府の方針を確定することを想定しています。そして、政府の方針をしっかりと明らかにした上で、国会においてしっかりとした議論に臨まなければならないと考えています。こうした道筋の中でも、自由な発言はそれぞれ尊重されるものだと考えております。
○国務大臣(小野寺五典君) 自衛隊という実力組織を担当します防衛大臣としましては、定められた中で日本の安全保障に全力を尽くしてまいる所存でございます。
○福山哲郎君 まさに外務大臣言われるように、自由で、しっかりと議論をするためにも、安保法制懇を開くなり議事録を公開する、ないと材料がないんです。材料がない中で突然主流になりつつあると総理に発言されても、何が主流なんだという話です。それも、砂川判決のように、基本的にこの数十年間、日本の政府として、ほとんどが自民党政権です。自民党政権の中で積み上げてきた議論をひっくり返すような議論を突然持ち出されて主流だと言われても、それは納得できません。
そして、しっかりとその議論のバックグラウンドであるべき小松法制局長官がこのような状況の答弁を繰り返されることに対して私は非常に遺憾に思っておりますので、議事録を精査して、またこの議論については続けたいということを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。