05/16
2013
第183国会 参議院 内閣委員会 2013年5月16日
道路交通法改正案 質疑
○福山哲郎君 おはようございます。民主党・新緑風会の福山哲郎でございます。今日は道交法の質疑ですので、何とぞよろしくお願いを申し上げます。
一昨年の四月に、栃木の鹿沼でクレーン車の運転者が発作によって意識を消失をして、登校中の児童の列に突入して小学生六名が亡くなるという大変痛ましい事故がありました。また、その一昨年の十月には、名古屋市内で無免許、酒気帯びでブラジル人の男性が一方通行を逆走して人をはねて、そして死亡に至らしめるという、これも非常にむごい事故がありました。
そして、記憶に新しい昨年でございますが、御案内のように四月、私の地元の京都でございましたが、祇園で、てんかんの症状を持っていると言われている加害者の方が、祇園という、あちこちの観光客が来られる中で暴走して死傷者を出すという事件がありました。一方で、その同じ月の四月に、亀岡で無免許の少年が小学生十名の列に突っ込んで保護者一名と小学生二名が死亡するという事故がありました。
これ、二年の間にこういう痛ましい事故が連続して起こって、本当に亡くなられた方々の御冥福をお祈りするとともに、御遺族の皆さんには本当に心からお見舞いを申し上げたいと思いますが、その状況で多くの御遺族や市民から署名が集まって、まず無免許運転に対する重罰化、それから何らかの形で運転を途中でできなくなるような症状をお持ちの病気の方に対する、より確実な、自己申告によって免許を交付できないような状況をつくる、してほしいというような、本当に理解できる、思いを考えれば、無念さを考えれば、本当に強い思いの署名が集まって、今回道交法の改正と、法務省さんは刑法の改正ということで、迅速に動いていただいたと思います。
我々も与党の時代もありましたので、その当時は、与野党超えて議連をつくっていただいて、このことについては一日も早く対応してほしいということを検討をした上でこういう状況になったことは評価をした上で、そこについては本当に法務省や警察も含めて、公安委員会も含めて評価をした上で御質問をしたいと思います。
実は、亀岡の暴走事故でお亡くなりになった横山さんという方のお嬢様は、私、ずっとお知り合いでございまして、事故の後すぐにお参り行くのも本当に遠慮するような状況で、一月たってから御自宅にお参り、弔問をしに行かせていただきました。その後も横山さんとは何度か話しましたが、やはり大変なショックと無念な思いで、いわゆる無免許が危険運転致死傷罪に適用されないということに対してずっと疑問をお持ちで、それは遺族の方、皆さんそうでした。
結果として、法務省が今回法案を改正することによって、無免許運転は三年から五年の罰則が加重されるということで、より重罰化の方向にかじを切っていただきましたが、残念ながら遺族の皆さんの希望である危険運転致死傷罪は変わらずに適用されないということになりました。
私自身は、家族の無念な思いも理解をしますが、法務省も一定、家族の皆さんの気持ちを考えた上で、法制審を早く動かしていただいたことも含めて、今回の法改正をしていただいたんだというふうに思っております。
今回の法改正への思いと、どのような考えで取り組んだかということと、どういう形で厳罰化されることによって今回の法改正が去年、おととしの痛ましい事故の結果改正になったのかということについて、まず法務省から御説明をいただけますでしょうか。
○大臣政務官(盛山正仁君) 福山先生には以前から本当にお世話になっております。また、今回もこの我々が出しております法案に対しても深い御理解を賜りまして、誠にありがとうございます。
先生だけではなく、各方面からいろんな御意見があるということは、もう我々も当然重々承知しておりまして、そんな中で今回の法案をまとめたということでございます。
まず、危険運転につきまして、危険運転致死傷罪といいますのは、暴行に準じるような特に危険な運転を故意に行う、そしてその結果、人を死傷させた者を傷害罪、傷害致死罪に準じて処罰するということで立法されております。
そして、先生御指摘のありましたとおり、法制審議会を開きまして、御指摘のような無免許運転を危険運転致死傷罪の対象とすべきかどうか、こういったことについて御議論いただきました。
そして、その法制審におきましては、無免許運転が暴行に準じるような危険性あるいは悪質性を類型的に有するとは言えない、そしてもう一点、人の死傷という結果との関係で、無免許であるがゆえに人が死傷したという直接的な原因関係が存しないと、こういう大きな二つの理由から、無免許運転自体を危険運転致死傷罪の類型に追加することとはしないとしたものでございます。
しかしながら、無免許運転中に人を死傷させた事案について、特に実態に即して処罰できるようにするため、今回、まずは無免許運転による加重規定を新設しております。無免許であることと人の死傷との原因関係の有無を問わず、従来より重く処罰できるようにすることで対応したということでございます。
○福山哲郎君 盛山政務官は本当に誠実にお答えいただいていると思うんですけど、まさに危険を承知で故意に運転して危険運転致死傷罪が適用されるなら、無免許だということも自分で分かっているわけですし、逆に言うと自分は無免許運転だから運転をすることが、まあ危険だという認識があるかどうかは別にして、今回の事件の少年に関して言えば、ほとんど寝ずに運転をして、更に言えば人の車まで借りて運転をして小学生の列に突っ込んだわけです。これは危険を承知した、故意に運転をしますし、まさに暴力と、暴行と同じぐらいというか、それ以上に私はひどいものだと思いますし、何の罪もない子供たちがこうやって犠牲になったことによって、このことがやはり遺族にとってはなぜこれが危険致死傷罪にならないのか、納得ができないと。
今の盛山政務官のお話は、法律としてはそうなんでしょうけれども、そこがまだ、私も今説明聞いても、僕は今日は納得しようと思って質問に立ったんですよ。ちゃんと誠意持って答えなさいと、遺族の皆さんがその説明を聞いて、そうか、法務省も遺族のことを考えた上で今回の重罰化にしたんだということが分かるように答えてくれと僕は昨日のレクでお願いをしていました。私も理解をしたいと思って質問をしたんですが、今のだとまだ余り理解を私はしにくくて、もう一回、政務官、お答えください。
○大臣政務官(盛山正仁君) 福山先生の御指摘、よく分かりますし、また御遺族の方にとっては、その無念さというんでしょうか、今回、政府側がこうやって警察庁さんの方と法の整備をするといっても、なぜこんな程度の法の整備であるのかという御指摘があるのは我々も重々承知しております。
しかしながら、法制審議会での検討というのは先ほど申し上げたとおりでございまして、法体系全体の中でどういうふうな、その罰則を含めての法の整備をするのかということで、今回、急遽法制審議会を開きまして、このような形での法案ということにしたものでございます。
危険運転致死傷罪の立法経緯などを踏まえまして、なお引き続き検討すべき課題があると当然我々も考えておりますが、まずはこの法律案の無免許の加重ということで御理解を賜れればと、そんなふうに考える次第でございます。
○福山哲郎君 一定の結論が出てきたので、それは今回はこの第一歩だということで、それも去年から、おととしとあったこの痛ましい事故に対して法務省が動いてより重罰化をしたということで理解をしますが、より、やはりこれは一般的な市民感情からいうとなかなか今の説明では納得できない部分もあって、そのことを御理解いただいた上で、法務省におかれましては、引き続きこういった状況を注視をしていただきたいというふうに思います。
それでは、盛山政務官、どうぞ、今日は引いていただいて結構でございます。
それで、現実にこういった登下校中の児童生徒が巻き込まれる交通事故の発生に対して、前民主党政権においては、通学路の交通安全を守りたいということで、警察庁、国交省、文科省、関係省庁副大臣会議を開催して、国レベルの連携体制の強化や地域レベルの連携体制の整備について、通学路の緊急合同点検を実施をしました。
御案内のように、昨年の政権交代前でしたけれども、取りまとめで全国の公立小学校で通学路八万百六十一か所のうち七万四千四百八十三か所で新たな安全対策が必要であるというふうな結果が出てまいりました。民主党政権のときは、このときには予備費から二度にわたって二千八百か所について安全対策を講じて、緊急に子供たちの通学路に対する安全対策をやりました。
現在における安全対策の取組状況と今後の更なる取組の加速について、これは政権が替わろうが替わるまいが、子供たちの通学路をより安全にしたいという思いは与野党関係ないと私は思っておりますので、古屋委員長、それから谷川副大臣、そして国交省から赤澤政務官来ていただいておりますので、それぞれの省庁について簡潔に、現在の取組状況と今後の更なる加速についてお答えいただきたいと思います。
○国務大臣(古屋圭司君) 確かに、おっしゃるとおり、やはり通学路の安全確保、極めて重要ですね。それで、我々は、平成二十四年度の補正で十億円、それから二十五年度の本予算で十二億円計上、これは何を警察がやることかというと、実は線引きをしたり標識を作ったりとかこういうようなことで、実際ハードの整備というのは国交省さんに御協力をいただいて取り組んでいただくということに相なりますけれども、我々としても、ちょっと細かい数字は今事前通告受けていなかったので、もし細かい数字が必要でしたら、交通局長もいますので交通局長から答弁をさせますが、そうやってしっかり国交省等々とも連携をして、やはり通学路の安全対策はこれからも徹底していきたいというふうに思っております。
○副大臣(谷川弥一君) 平成二十四年四月以降、登下校中の児童等が巻き込まれる交通事故が相次いだことを受け、同年五月に、文部科学省、国土交通省、警察庁の三省庁において通学路の危険箇所に関する緊急合同点検を八月末まで、これに基づく具体的な対策の検討を十一月末までに行うことを各都道府県に要請しました。
点検の結果、平成二十四年十一月末時点で約七万四千か所の対策必要箇所が明らかになり、三省庁が連携して各地域における対策を支援しています。
内訳ですが、教育委員会、学校による対策必要箇所約七万六千か所のうち対策済箇所は一万五千か所、道路管理者による対策必要箇所は約四万六千か所、うち対策済箇所は一万か所、警察による対策箇所は約一万九千か所のうち対策済箇所は約七千か所。
具体的な対策として、例えば教育委員会が実施する対策として通学路の変更やボランティア等による立ち番、道路管理者が実施する対策として歩道の整備や路肩の拡幅、警察が実施する対策として信号機や横断歩道の新設があります。(発言する者あり)
また、文部科学省では、平成二十五年度予算で、専門的見地から教育委員会や……
○委員長(相原久美子君) この際、申し上げます。
質問者の質問にしっかりと的確に答えていただきたいと思います。質問者の質問に的確にお答えいただきたいのと、質問者の質問を繰り返すことはやめてください。
○副大臣(谷川弥一君) はい。
そういうことです。
○委員長(相原久美子君) まずは、赤澤国土交通大臣政務官。(発言する者あり)
○大臣政務官(赤澤亮正君) 福山委員の御指摘のとおり、通学路の安全確保、児童のあるいは生徒の命を守るということは与野党もう共通の課題でございますので、しっかり御指摘も踏まえて取組を加速していきたいというふうに考えております。
通学路の緊急合同点検の対策必要箇所七万四千四百八十三か所のうち道路管理者による対策箇所は四万六千十七か所ということで、昨年十一月末現在ではそのうち一万四百三十四か所が対策済みということになっております。三月末時点の数字についてはちょっとまだ集計中でございますので、お許しをいただきたいと思います。
対策が完了していない箇所については、平成二十四年度の予備費や補正予算、委員御案内の防災・安全交付金がこの中に五千五百億入っておりまして、その内数でございますけれども、歩道整備や防護柵の設置、あるいは即効性を出すためにカラー舗装といったようなことで対策を進めてきたところでございます。
国交省としては、通学路の安全確保が最重要課題だと認識しておりますので、早期に通学路の安全確保が図られるよう、地方公共団体が実施する歩道整備などの対策について、平成二十五年度も一兆五百億円を確保した防災・安全交付金の内数として財政的支援をしっかりやる、それから好事例集の作成等の技術的支援も行ってまいります。
また、地域で情報を共有することで対策が促進されるということを目的として、市町村に対策箇所図などをホームページ等で公表していただいております。大体七割の市町村がやっていただいてくださっておりますが、引き続き対策の実施状況も含めて積極的な情報公開も行っていきたいと思っております。
○政府参考人(倉田潤君) 昨年五月末以降に実施いたしました緊急合同点検の結果、警察では一万九千七百十五か所におきまして信号機の新設、歩車分離化、横断歩道の新設等の約二万六千の対策を実施する予定としております。
この対策の進捗状況につきましては、昨年十一月末現在で既に全体の約三割に当たる約九千の対策を実施しておりまして、今年度中に全体の約九割に当たる約二万四千の対策を実施する予定でございます。
残りの対策については、地元の合意形成を要するものや道路管理者と事業の調整を行う必要のあるものも含まれますが、いずれにせよ、関係機関との連携を密にいたしまして、早期に対策を実施するよう都道府県警察を指導してまいる所存でございます。
○委員長(相原久美子君) 谷川副大臣、質問者の質問に的確にお答えください。
○副大臣(谷川弥一君) 文部科学省では、平成二十五年度予算で、専門的見地から教育委員会や学校への対策や点検に関する指導、助言を行う通学路安全対策アドバイザーの派遣に係る経費を計上しており、本事業により、専門家の知見を活用し、各地域における対策が早急に進むよう支援してまいりたいと思っております。
済みませんでした。
○福山哲郎君 ありがとうございます。
我々が対応させていただいたことをちゃんと今の政権も受け止めていただいていることに関しては感謝をします。
一方で、今それぞれの省庁言われたように、これ地域との連携が重要ですし、道路管理者と警察と学校側がばらばらに動いていると本当に効率的な運用ができないし、迅速な運用ができないし、必要なものが本当に整理されるのかということが課題です。
別に私は民主党が全てだとは全く思いませんが、民主党は先月に児童通学安全確保法案というのを国会に提出しています。これは、今各省庁が言われたとおり、地域に協議会をつくって、そこでそれぞれの担当者が集まって必要なものに対して事業決定すると、それに対して国が交付金を交付をするという形の法律を提出しております。
是非ともこのことについても与野党協力していただきたいと思っておりますが、公安委員長、いかが認識されておられますでしょうか。
○国務大臣(古屋圭司君) 今委員の御指摘は、御党が検討されているいわゆる議員立法についての言及でございますね。
私どもも、それについては詳細はまだ承知をいたしておりませんが、あくまでも議員立法ということで、やはりこれは立法府の中で、こういった問題は与野党対決する話じゃないと思うんですよね。やはりしっかり、必要であるということならば立法府の中において対応されていくということを私は期待をいたしますし、また、そういった推移はしっかり見守っていきたいなというふうに思っています。
○福山哲郎君 趣旨については先ほどの御答弁も含めて御理解いただいていると思いますので、それは立法府の責任だというのは御指摘のとおりだと思います。
少し話それるんですけど、京都市の学校のいわゆる用務員さんが、休みを返上して、実はこのぐらいの大きさの飛び出し坊やという飛び出しちゃ駄目だという板張りの板を、学校の子供たちの安全を守りたいといってこの事故の後にボランティアで作られて、それを学校の周辺に何とか掲げたいと思っているんですけど、今度は道路使用許可の問題だとか学校の地域の問題だとか、実はいろんな課題があるんですね。もちろん、先ほど国交省が言われたり警察が言われているように、いろんな標識の整備とかが要るんですけど、そういう自主的な取組も実は始まっておりまして、こういったことも地域の中での温かい取組ですので、是非、古屋委員長にはそういった取組があることも御理解をいただいて、何とかそういった形で地域で子供の安全が守れるように警察としても協力いただけるように御指導いただければ有り難いというふうに思います。
次、行きます。
一方で、祇園の暴走事故です。
これは実は、先ほど亀岡の亡くなられたお嬢様のお父様を私存じ上げていると言いましたが、今度はこのてんかんで暴走して事故を起こした患者というか加害者がかかっていた病院の院長さんと私はずっと懇意にしておりまして、これも事故の直後この院長さんにお伺いしたところ、とにかく運転を控えるように注意をしていたと。この加害者は後天的にてんかんになって、学生の時代にバイクで事故を起こして外傷性でてんかんになった若者だそうで、それで、ちょっとその事故の直前は頻繁に発症していたので、発作が起きていたので、車の運転は控えるようにということを病院からは注意を何度もしていたと。お姉さんが前の日に家族会議を開いて、もう車の運転はやめるようにということで、働き場所にも言おうという話をしていたやさき、次の日のこの事故だったんですね。
今回、自己申告ということの制度で罰則化になりました。それは私、一定理解をするんですが、実は、二〇一一年度中、免許の取消しで本人からの相談が百八十三件、家族からの相談が二百三十二件、そして免許証の今回よく言われている更新のときに自己申告をしてくれた数が二百三十三件で、実はそれぞれが二百件ずつぐらいなんですけれども、実際に交通事故を起こしてしまって、起こして調べたら結果的にそういう病気だった、いろんなタイプの病気だったというのが三百件以上なんですね。
これは、本当に自己申告が実効性が上がるかどうかというのは、罰則付けても何しても、例えば仕事がなくなるとか、それによって差別を受けるかもしれないみたいなことになると、なかなか自己申告しにくいという状況の中で、どうしても実効性が上げにくいのではないかと私は思っているんですが、そこについては、古屋委員長、どう考えられていますか。
○国務大臣(古屋圭司君) 委員御指摘のように、両方の考え方というのがあると思うんですね。しっかり強制的に申告させなきゃいけない、一方でそれはちょっと影響が大き過ぎるのではないかという、その両方の考え方があるのはよく承知しております。
有識者会議を六回ほど開かせていただきまして、その中で、罰則規定の感銘力というそうですね、専門用語で、ある意味で抑止力という意味だそうですけれども、やっぱりこういうのがあるので、自己申告ということでも十分その効果はあるのではないかと。実際に今病状を申告をされているという、真面目に申告をされている方もたくさんいらっしゃいますので、こういった罰則規定を設けることによって更にそういった申告が増えていくのではないかと、こういう専門家の意見もございまして、我々はその意見を尊重して、こういう自己申告ということにさせていただきました。
私は、日本人の精神文化というのは、ルールができるとある程度ルールを守るということがあると思うんですね。例えば、信号でも、赤信号でも、恐らく歩道を渡るとき車が全く来ていなくても都会で渡りませんよね。福山さん、海外でも生活されていたので、海外の方、信号守りませんよね。やっぱりそういう何か精神文化というのがあるのかなという感じもいたしますので。
それともう一つ、やはり医師とそういった患者との信頼関係もしっかり醸成をして、それから、そういった不利益を被らないようにしっかり広報活動していく、そういう総合的な戦略というのが必要だと思うんです。まずはこの入口においてこういう形で規制をさせていただいたということなので、是非その辺は御理解をいただきたいというふうに思います。
○福山哲郎君 私は理解をしているつもりです。ただ、実際に申告が、精神文化は私も理解をしておりますが、現実には前の改正の後はなかなか申告が上がらなかったという実態もあります。
一方で、今回、医師による任意の届出制度を創設されましたけれども、逆に言うと、お医者さんの立場でいうと、てんかんなりいろんな症状の相談をしてくれる人に、免許持っているときに、医師がいきなり公安委員会にこの人はてんかんですというような届出を本当にお医者さんがするのかと。逆に、てんかんみたいな病気の場合には医師との信頼関係が重要で、それは大臣言われたとおりです。しかし、逆にそんなことを医師が届けられるんだと思ったら、今度は逆に言うと通院しなくなる可能性もあります。
一方で、お医者さんの立場でいえば、自分が届けることによって、罰則規定ができたので、患者さんを前科者にするわけです。自分のところに来て信頼している患者さんを逆に言うと届けることによって、あんたは申告しなかったじゃないかといって前科者にするような状況でお医者さんが本当に積極的にやるのかということも考えられます。もっと言えば、お医者さんは、そういう難しい患者さんは逆に言うと診察を回避するような状況が起こることも考えられます。
これ、本当に僕は難しいことだと思っておりまして、今回の法改正は私は第一歩だと思いますし、百点満点の制度はなかなかないので、御苦労いただいていると思いますが、例えば今議論が出ているのは、お医者さんが直接公安委員会に言っちゃうと、公安委員会から患者さんにいきなり通知が行ったら誰が言ったかすぐばれちゃうわけです。例えば第三者機関みたいなものをつくって、お医者さんがそこに相談をすることによって、そこにカウンセラーとか専門家とか雇用に関するような相談を受けるような人もいて、そこに患者さんが行って、じゃ、正直に申告しようか、免許を一回諦めようかというような議論ができるような状況ならば一定患者との信頼関係も消えないと思うんですけれども、いきなり公安委員会にお医者さんが言って、いきなり免許駄目ですよみたいな話になると、非常にそこはなかなか医師との信頼関係も含めて難しいと思いますし、もっと言うと、免許のときに実際に申告しなきゃいけないという前の改正のことってお医者さん半分ぐらいしか知らないんです。今回、任意で届出するということもどうやってお医者さんに徹底をしていくのか。これ、実は相当多くの課題があります。法律を作ったから、改正したからといって解決する問題ではありません。
これは大臣、御理解いただいていると思いますが、そこについて、僕時間がないのでちょっと今駆け足で御質問しましたが、御答弁いただければ。
○委員長(相原久美子君) 時間が来ておりますので、簡潔に願います。
○国務大臣(古屋圭司君) 確かに、患者と医師の信頼関係が損なわれるとか、そういう懸念ですよね。これはよく私も分かります。ただ、ああいった痛ましい事件がありましたので、やはりある程度のルールというものはつくっていかざるを得ないという、こういう社会的な要請もあったと思います。
だからこそ、我々は、専門家委員会で真摯な議論をさせていただいて、そして皆さんの意見を聞きながらやって、やはり医者が、患者の信頼関係はもちろんですけど、一方ではお医者様がしっかりそういう広報というか、そういう認識も持っていただく。ある意味でお医者さんの社会的責任でもあると思うんですね。患者との関係を損なわないようにして対応していくというのもお医者さんの社会的責任の一つだろうというふうに思います。
ですから、これはまず、この法律を作って稼働を始めるわけですね。そういったときの状況をしっかり見極めて、丁寧なフォローアップというのはこれ非常に私は大切だと思っております。やはりまずそこから、スタートするところから始めていくということですね。
今御指摘の第三者による届出というのが、医者と第三者がどういう関係になるのかなとかいう、その辺もちょっと私、まだ詳しいことを承知をいたしておりませんので、いずれにしても、患者の情報は公安委員会に伝わるということになりますので、じゃ本当にその第三者を通じてやるということの効果とかそういったものは、ちょっと私まだよく承知をいたしておりませんので、取りあえず、その辺についてはまだ十分な検討がこれからも必要なのではないかなというふうに思います。
○福山哲郎君 今後ガイドライン等を作られると思いますので、そのときには関係団体その他医師会等々とも協議をしっかりされて、丁寧に対応していただきたいと思います。
もう一個だけで、もう時間がないので終わりたいと思います。
実は、人身事故については免許に対する行政処分が関係するので、全部都道府県で人身事故はデータベース化しているんです。ですから、人身事故の多い運転者みたいなのは把握できるんですけど、物損事故は直接免許の交付の行政処分の対象にならないので、物損についてはデータベース化していないんです。ただ、物損事故とかを含めて複数回交通事故を頻繁にやっている人の事故の蓋然性というのは高いんですね。でも、それは人身事故じゃなくて物損事故も当然なわけで、その物損事故の複数回に対してチェックができてデータベース化をして危険運転者みたいなのが把握できるような状況をつくった方が、私は交通事故情報としてはより交通事故が減る、こういった痛ましい事件が減る可能性というのは高まるというふうに思っていまして、そのことに対する整備について、現状と今後の見通しについての決意をいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
○国務大臣(古屋圭司君) 簡潔にお答えいたします。
有識者懇談会でも物損事故のデータベース化、提言されています。そこで、既に都道府県県警に対して、データベースの構築がなされつつあるところでございまして、平成二十三年、十六県でデータベース化されています。現在三十三県がデータベース化で、今年度中にあと六県整備予定なので三十九県ですね。あと残り八県、これ全ての都道府県でデータベース化ができるようにしっかり警察としても督励をしてまいりたいというふうに思います。
○福山哲郎君 ありがとうございました。