09/11

2014

「福島第一原発政府事故調査委員会の調書の公開にあたって」


いつもお世話になり、ありがとうございます。

今日の夕方、東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会、いわゆる政府事故調がヒアリングを実施した調書の一部が公開されることとなりました。最近、報道を賑わせている、いわゆる『吉田調書』も公開される予定です。
当時、内閣官房副長官として原発事故の対応に当たった私も、もちろん、ヒアリングを二回受けました。当然、同時に『福山調書』も公開されると思います。公開を拒否する理由はありません。

しかし、当時の政府事故調は、事実をいかに把握するか、あのような過酷事故の原因は何だったのか、ということに力点をおいていました。また、犯人探しをすることが目的ではなく、いたずらに「誰があんなことを言っている」とか「誰と誰の記憶が食い違っている」等の問題が生じるのを避けるために、証言者に非公開を約束して実施しました(下記:ご参考)。公開を前提にすると、自らの所属組織に不利な証言はしにくくなったり、個人名の問題に触れにくくなったり、事実が隠れる恐れがあるからです。
今回、公開されるに至ったことは、原発事故の実相を国民に知っていただくために極めて有効であり、歓迎すべきところですが、そもそも非公開であったものを、急にルールを変えて公開にするという方法には若干違和感を持ちます。

公開される『福山調書』は、『原発危機 官邸からの証言』(ちくま新書)に記したものとほとんど変わらない内容になっています。これも当然のことです。
ただし、公開にあたって、内閣官房の担当者の立会いのもとで閲覧すると、一部に「個人のプライバシーや評価に当たるもの」「政府の危機管理上、公開しにくいもの」「外交案件」「事故調側の記載ミス」等の箇所が散見され、それらの箇所については黒塗りとさせていただきました。それでも、できる限り文意が伝わるよう、最小限にしたつもりです。

今日以降に公開されるすべての調書をご覧いただくにあたって、国民の皆様には、「あんなことを言っている、こんなことを言っている」と部分的にとらえるのでなく、事故がどれほど過酷であったのか、福島原発第一発電所、官邸、東京電力のそれぞれにおいて関係者がいかに懸命に対応したのか、その時の報道はどうであったか、その中から読み取れる教訓は何なのかという視点で読んでいただければ幸いです。

今日で、東日本大震災の発生から3年半が経過しました。亡くなられた方・行方不明になっている方が1万8千人を超え、いまだ福島県の避難者数は12万人以上にのぼります。福島第一原発事故後の作業は、汚染水処理、除染、廃炉、それぞれに困難を極めています。途方もない年月を要する状況です。
『調書』の開示を通じて、改めて、原発事故の厳しさを理解していただくとともに、今後の原発のあり方についての議論が深まることを望みます。

<ご参考>
「ヒアリングの方法等について」
(平成23年7月8日 東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会申合せ)(抄)
(1)ヒアリングは、原則として、非公開かつ少人数で行うこととする。
【注1】非公開・少人数とする理由は、個々のヒアリング対象者ごとに相違があるが、①真実の供述を得るため、②公開することが不適当な情報が少なくないため(公安上の観点等)、③個人のプライバシーに関わる供述が含まれることが少なくないためなどが考えられる。

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