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2008
第170国会 参議院 環境委員会 2008年11月13日(未定稿)
地球温暖化問題
○福山哲郎君 おはようございます。福山でございます。よろしくお願い申し上げます。
まず冒頭、斉藤大臣におかれましては御就任おめでとうございます。是非積極的に環境行政を推進をいただくように心からお願いをしておきたいと思います。
さきの予算委員会で私は環境には関係ないことを大臣に質問いたしまして、失礼をいたしました。今日は環境のことに特化をして質問したいと思いますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。
今日、実は三十分しか時間がありません。たくさんのことをお伺いしたいと思いますので、早速入らせていただきたいと思います。
一つは、大変残念なニュースが流れました。二〇〇七年度の我が国の温室効果ガスの排出量は前年度比二・三%増の十三億七千万トンになりました。これは、九〇年度比で八・七%の増になっておりまして、何と九〇年度以降最も多くなりました。
一つは、原発の稼働率の低下や経済活動が活発だったこと等があって、政府としては誤算があったと思いますが、しかしながら、現実には京都議定書の第一約束期間にもう突入をしているわけです。その状況でのこの数字というのは非常に我々としては遺憾に思っておりますし、これまでの京都議定書が発効してからの政府の取組が不十分であったと言わざるを得ません。今後の国際交渉における我が国の交渉力のある種の低下も想定されますし、そのことについて大臣の見解を伺いたいと思います。
○国務大臣(斉藤鉄夫君) 昨日、二〇〇七年度の二酸化炭素排出量、環境省が取りまとめたものを発表させていただきました。私も大変深刻に受け止めております。
ただ、子細に見ますと、例えば運輸部門については低減をしてきておりまして、その傾向が見られます。また、いわゆる業務その他部門におきましても、いわゆる今回原発の停止によって原単位、電力の原単位の数字が上がりましたので、その数字を使えば今回業務その他部門も上がっているんですが、いわゆる普通の数字を使えば、これまでずっと増え続けてきた業務その他部門についても改善の傾向が見られるという、希望の光も少しございます。
この達成目標に向けて毎年点検をすることにしておりますので、今年度末もしっかりと点検をして、強化すべきところがあれば強化をし、達成目標に向けて全力を挙げていきたいと思っております。
○福山哲郎君 環境省並びに環境大臣からは、そういう御答弁を私はもう毎度毎度いただいております。
現実問題として、原発の稼働率が低下をして排出係数が変わったと。確かにそれなりにお気の毒な点はあったと思いますが、じゃ、いつまでそういうことに頼りながら温室効果ガスの減少に対してコミットしていくのかと。そのことについては、原発の例えば事故の問題や地震の問題も含めて多少不確実性があることはもう所与のものでございまして、根本的にその中で温室効果ガスをどう減らしていくのかというのは焦眉の課題で、そういうある種の言い訳は国際交渉上は通用しないはずです。
他の国は、排出量取引制度の問題、さらには再生可能エネルギーの推進の問題を含め、環境税の導入も含め積極的に関与している中で、今温暖化の問題にコミットしているわけですが、そのことについて、大臣は就任したてですから、その過去の経緯について私は大臣を責める気は今のところありませんが、しかしながら将来的には、今の答弁の延長線上だと同じことがまた起こるのではないかというふうに私どもは判断せざるを得ないんですが、大臣、やはり就任して、大臣のいろんな私はこれまでの御所見も拝見をしておりますが、温暖化に対しては積極的にかかわりたいというふうにおっしゃっておられますので、どうか前向きな御答弁をいただけませんでしょうか。
○国務大臣(斉藤鉄夫君) 御激励ありがとうございます。
例えば、今回見直しをする、点検をする、そしてその点検の結果見直しをすると言いましたけれども、それだけではなく、今回太陽光発電世界一奪還計画を掲げまして、一昨日も新たな計画を発表させていただいたところでございます。また、この十月から排出権取引の試行を始めさせていただきました。このような、もっとほかにもございますけれども、一つ一つの施策を通じて、これまでの延長線上ではない温暖化対策強化を私も大臣として責任を持って進めていきたいと思っておりますので、どうか御指導のほどお願いしたいと思います。
○福山哲郎君 前向きな答弁をいただきましてありがとうございます。
まあ、出た結果ですから、より効果のある対策を新たに講じていただくように心から希望します。
アメリカではオバマ氏が新大統領に選出をされました。御案内のように、ブッシュ政権ができてすぐに京都議定書の離脱を発表されてから、温暖化の交渉、それから国際会議は大変混迷をしてきました。それはアメリカのある種の方針ですから仕方ないとして、オバマ大統領は、これまでの大統領選挙でも温暖化政策については積極的な発言を繰り返されています。
これまで日本の政府は、京都議定書は批准をしましたが、ある種アメリカと他の国とのバランサー的な役割に終始をしてなかなか積極的な対応をできなかったというのも、我々から見るとそういうふうに見受けられる部分もあります。
今回、オバマ大統領になりましてアメリカが変わっていくと、実はいつの間にか日本はアメリカに追い抜かれ、いつの間にかふと見たら最後尾を走っているというような、そういう国際的なリスクも背負ってきていると思いますが、この大統領が替わったことに対する日本側のスタンス等について、大臣からお答えをいただけますでしょうか。
○国務大臣(斉藤鉄夫君) 一言で申し上げますと、非常に期待をして注視をしていきたい、そして新たな二〇一三年以降の枠組み、この枠組みについては、来年のCOP15で最終決定するわけですけれども、その中に、アメリカとともに協力しながら新たな枠組みをつくっていきたいと、このように思っております。
オバマ次期大統領は、キャップ・アンド・トレードの導入、それから自然再生エネルギー、それから二〇五〇年八〇%削減、これが一番大きいですね、二〇五〇年八〇%削減ということは既に明言されております。そういう意味で我々の方向性と軌を一にするわけでございまして、協力をしながら新しい枠組みをつくっていきたいと思っております。
○福山哲郎君 大臣のお言葉ですが、我々の方向性と軌を一にするかどうかは、まだ日本政府の対応ははっきりいたしておりません。
今キャップ・アンド・トレードの導入をオバマ大統領が目指しているという表現がありましたが、そのことについて日本の政府としては対応が決まっているわけではないと思いますし、大臣が積極的なことは私は大変評価をしたいと思いますし、是非導入に向けて力強い推進役を果たしていただきたいと思っておりますが、本当にアメリカが動き出して、EUと排出量取引制度で国際的なルールづくりで協調し出して、そこにカナダ、準備をしているオーストラリア等が加わってくると、本当に日本はいつの間にかまたグローバルルールを押し付けられる立場になりますから、もうここで何度も私は申し上げておりますが、日本は省エネ技術にしても自動車にしても間違いなくトップなんです。トップグループにいるわけです。そうすると、グローバルルールづくりに逆に日本は積極的に果たすことによって、二十一世紀の世界のマーケットに対する日本の経済的なある種の主導権が握れる可能性があると、私はもうずっと五、六年ここで言い続けておりますが、そのことについて、今回の自主的な排出量取引制度が、私は申し訳ありませんが、到底グローバルなスタンダードになるような形だとは思っておりませんので、そのことについては、大臣としてはしっかりと世界の状況をウオッチをしながら、政府の中でも力強く御発言をいただきたいと思います。
その中で、実は、日本は政府としてAWGにCOP15に向けての新たな枠組みに対する提案を九月の三十日にされています。その中で、いろいろ細かいことを申し上げるときりがないんですが、一つは、要は国別総量目標について、日本の提言では、どうも排出総量自体にプラス最新の年を含む複数の年からの削減率という提言がなされていました。実際この排出総量自体というのは、一体何を基準に今政府は想定して提起をされたのか。それから、最新の年を含む複数の年からの削減率ということは、なぜまたこのようなことを提案されたのか。明確にお答えをいただけますでしょうか。
○政府参考人(寺田達志君) まず、排出総量の目標の方でございます。これにつきましては、セクターごとの削減量と申しますか、削減ポテンシャル、これを積み上げましたものに、さらに、例えば世界全体での排出量のピークアウト等の要素を考慮して設定をするという考えでございます。
また、基準年のお話でございました。基準年は、ある一定期間における温室効果ガス排出量の推移を見るためには有用な制度でございますけれども、たった一つの排出量ということになりますと、その時点以前の削減努力が考慮されない等の問題があるところでございます。したがいまして、京都議定書の基準年となっております一九九〇年や最新の年など複数の年からの削減率を併せて示すことで、異なる期間における削減の推移を把握するということが可能になるものだと考えております。
○福山哲郎君 それは、政府のこれまでの見解を変えたということですか、寺田さん。鴨下大臣はこれまでずっと、セクター別アプローチは国別総量目標を代替しないと国会の場で我々に明言をされてこられました。そのことについては、政府の見解を変えたなら変えたと言っていただかなければいけませんし、それを、役所が勝手に変えて条約事務局に提出したとなったらこれは大問題ですから、そのことについては明快にお答えをいただきたいことと、今の答弁で斉藤大臣自身、公明党さんの見解も含めて、いいと思われているのか、お答えをいただけますか。
○政府参考人(寺田達志君) ただいまお尋ねがございましたセクター別アプローチと国別総量目標の件でございます。今回の提案では、各国が設定する国別総量目標の比較可能性を確保するためにセクターごとに削減量を積み上げる、そういったセクター別アプローチを活用するということでございます。すなわち、セクター別アプローチは、先進国の国別総量目標の比較可能性を担保するための手法として活用するわけでございまして、国別総量目標の設定を代替するものではございません。
○国務大臣(斉藤鉄夫君) 国別総量目標の設定を代替するものではないということでございまして、これは、さきの神戸におきます環境大臣会合でも議長サマリーに、セクター別アプローチが国別総量目標を設定するために用いられるもので、これを代替するものではないことを明確にしたというふうに明確にしておりまして、国の方針は変わっておりません。
それから、福山委員の、先ほどの答弁で公明党出身の大臣としてはいいのかということでございますが、公明党としては、基準年について一九九〇年で常にこれまで物を言ってまいりました。その基本的な考え方は変わっておりませんが、しかしながら、最終的に来年のCOP15で次の枠組みをつくるときに、アメリカやインドや中国も加わりやすい、加わりやすいというか加えなきゃいけないんですが、そのためには、今この基準年について明確にしておくことがいいのかどうかという議論もございまして、先ほど地球環境局長が答弁申し上げたとおり、いろいろな立場の国の人が入りやすいような形で議論をするということも一つの方法ではないかということで、今のような地球環境局長の答弁になったわけでございます。
御理解いただきたいと思います。
○福山哲郎君 大臣のお立場は理解をいたしました。
実は、政府がついこの間ですが、中期目標検討委員会というのを設置されました。来年のしかるべき時期に設定をするということなんですが、大変実は個人的なことで恐縮ですが、私は遺憾に思っています。
昨年のちょうど十月に福田総理と当時の鴨下環境大臣は国会のテレビ入りの答弁で、昨年中にです、要は今年ではありません、昨年中の年内に中期目標と長期目標を設定すると実は私に答弁をいただきました。それが、一年たって今、中期目標検討委員会をつくったと。一年たってですよ。昨年の十二月の末までに出すと当時の総理と大臣がおっしゃったのに、一年たってやっと委員会をつくりましたというのは私としては非常に遺憾に思っておりまして、検討委員会をつくられたことに関しては、つくればいいと思いますが、一体いつこれを設定をして、国のポジションを発表されるおつもりなのか。
それから、去年、福田総理と鴨下大臣が言われた答弁についてはどのように考えておられるのか、明快にお答えをいただけますか。
○国務大臣(斉藤鉄夫君) まず、長期目標、二〇五〇年、六〇ないし八〇%削減ということについては、昨年六月の福田ビジョンで明確にし、七月の低炭素社会づくり行動計画の中で閣議決定をさせていただきました。
それで、今の御質問は、じゃ中期計画はどうなのだということかと思いますけれども、この中期計画につきましては、できるだけ早く設定をしなければいけないと私自身思っておりますが、いろいろな国内に意見がある。また、長期目標については技術革新という部分があって、その技術革新というところはある意味でブラックボックス的な感じで長期的な目標ができるわけですが、中期目標については、ある程度現実的な技術的な積み上げで持っていかなくてはいけないということもこれあり、いろいろな議論がございます。そういう議論をオープンな場で情報を提供しながら議論をする。
しかし、最終的には検討委員会は選択肢を提示するということで、最終的には政府が責任を持ってこれを決めたいと思っております。来年のしかるべきときに決めたいと思っておりますので、この点、御理解をいただければと思います。
○福山哲郎君 これまた実は斉藤大臣の所属されている公明党さんは中期目標の設定は強く主張されていますので、まあいつまで言っても、これのれんに腕押しなので私もあれなんですが、言ってもせんないなと思っておるんですが、これはやっぱり中期目標は必要です。
一つだけ確認をしておきます。
バリ・ロードマップで、オールドAWGの中でのIPCCの先進国の削減の必要幅は二五から四〇%という表現があります。これを日本は合意をしています。当然、日本が設定する中期目標は、この先進国の二五から四〇%の削減の内数に入ると。それをちゃんと視野に入れて、内数の中でまとめるという御意向があるのかどうかだけはお答えをいただきたいと思います。
○国務大臣(斉藤鉄夫君) IPCC、科学者がまとめた報告、これを根拠に政策決定はなされるべきだというふうに私自身、また公明党も申し上げてまいりました。
だからこそ、今回の麻生政権の自民、公明連立政権合意の中に、この中期目標につきましては、科学的知見に立脚して中期目標を策定するという旨が盛り込まれたわけでございます。
検討委員会におかれましても、この政権合意ということが当然ベースにあると思いますし、先ほど申し上げましたように、検討委員会が決めるわけではありません。検討委員会は選択肢を示すということでございますので、当然この選択肢の中にこの科学的知見というものも幅の中に入っている、このように認識しております。
○福山哲郎君 今、微妙に斉藤大臣はうまい答弁をされたと私は思っているんですが、要は検討委員会の出てくる数字は確かに選択肢を提示をするとしても、その中で政治的に決める範囲は、このオールドAWGで日本が合意をしている二五から四〇の幅が視野に入っているか。当然、その幅の中に入ると判断をしてよろしいですね。
○国務大臣(斉藤鉄夫君) 検討委員会がどのような選択肢を提示するかということは、今の段階で私の方から前提を言わない方がいいかとも思いますが、当然、これまでの議論で、また科学者、IPCCが報告していること、また政権合意にあることを考慮に入れた選択肢が提示されると、このように思っております。
○福山哲郎君 ですから、選択肢が提示をされた後、政治的な決着もそこの幅だというふうに思っていいですね。
○国務大臣(斉藤鉄夫君) その点につきましては、私自身の考えはございますけれども、政府の中で今後しっかりと議論をし、根拠のある、世界に説得力のある決定をしていきたいと思っております。
○福山哲郎君 そこの、私自身のお考えは、大臣、大臣の意思としてお伝えをいただきたいんですよ。そうでないと政府内でどういう議論がされるか見えないから、国民からは。その決定がどうなるかは、政府内の調整があるのは私も理解をします。しかし、現職の環境大臣がどういう意思で今立ち位置をいらっしゃるのかということについては、ここで言及をしていただく分は、最初の所信に対する御答弁ですから、是非そこは遠慮なさらずに思い切って御発言をいただきたいと思います。
○国務大臣(斉藤鉄夫君) この問題については、環境省だけで決定できる問題ではなく、四大臣会合、官邸で決定することでございます。
その中で私が申し上げている内容につきましては、これまでいろいろな場面で私、申し上げてきた。参議院の予算委員会では福山先生に質問していただけるかなと思って期待していたんですが、そこまで至らなかったんですが、衆議院の予算委員会では岡田委員から質問がございまして、その趣旨を私、申し述べたところでございまして、そういう考え方で頑張っていきたい。つまり、この自民党・公明党連立政権合意にありますように、科学的知見に立脚して中期目標を策定する、その科学的知見というのは、科学者の集まりが九五%以上の確率で確からしいといったその知見でございます。
○福山哲郎君 大変、言える範囲でおっしゃっていただいたと思いますので、そこは私も評価をさせていただきたいので、是非頑張っていただければと思います。
もう時間があと十分になりました。駆け足でいきます。
先月成立した本年度補正予算に、住宅用の太陽光発電に対する補助金が導入をされました。これは、二〇〇五年に打ち切られてドイツでマーケットシェアをどんどんどんどん奪われた結果、もう一度復活をしました。また、経産省は、御案内のように、十倍の住宅に対する住宅の太陽光発電設備を入れるということを表明をされました。このことは私は大変評価をします。
しかしながら、何と新築でも既築でも平均価格として七十万円の上限金額を設定して、それ以上、上の金額は排除されています、補助金の対象金額として。実は、新築と既築で平均単価が違います。新築は平均単価五十七万円、既築は平均単価七十四万円です。日本の新築と既築の太陽光パネルの設置は、新築はわずか二〇%のシェア、既築が八〇%のシェアです。その既築の八〇%のシェアの平均価格が七十四万円なのに、七十万円に設定をしています。このことの根拠をお示しください。
○政府参考人(羽藤秀雄君) まず、補助金のこの対象について七十万円ということで上限を設けさせたことでございますけれども、これは昨年の実際に導入をされました太陽光発電システムの平均価格について、財団法人新エネルギー財団の調査に基づいてこれを設定をしたものでございます。
それから、既築と新築との関係においても一律に設定をすることについていかんというお尋ねでございますけれども、この点につきましては、仮に既築と新築で別個の補助要件を設置をいたしますと、例えば故意に太陽光発電システムの設置時期を遅らせるといったようなことによって不正受給をするといった事態も生じるおそれがあるので、こうしたこともありまして、今回の補助要件につきましては一律の基準としてキロワット当たりの七十万円ということを設定をした次第でございます。
○福山哲郎君 実はお手元にお配りしたペーパーは各メーカーの単位でございますが、これ実は工事費と附属機器が込みでございます。これ、例えば雪国だとかへき地だとか三階建てだとか、そういった状況によって工賃が変わります。もっと言えば、そこの地域の人件費も差異がもちろんございます。
これを見ると、七十万円というのは合理的なように見えるんですが、C社とかD社とかB社のぎりぎりのところでいうと、実はどうしても導入をしてほしいメーカーとか工務店からしたら、人件費削ってもとにかくやれというようなことがやられる可能性がある。逆に言うと、工事がちゃんとできるかどうかについても微妙な判断が出てきます。今言われたみたいに、不正が新築と既築でという話がありましたが、それ以上にもっと、実は七十万円で切ることによっていろんなひずみが出てきます。B社、変換効率一七%、これ変換効率一番高いところです。これが七十四万円になるんです。これ、変換効率が高いというのはそれだけ性能がいいわけですから、投資も掛かっているわけです。それで値段が高くなるのは、今のマーケットからいうと当たり前の話なんです。
経産省も来年度の概算要求の中に、太陽光パネルの変換効率を上げるためだということで、予算を百億円以上入れようとしています。つまり、変換効率を上げることというのは、これからの太陽光パネルのマーケットを拡大をしていったり世界的にも勝っていくこと、更に言えばこれからの省エネ、さらには再生可能エネルギーを普及するために絶対に必要なことなんです。ところが、これですと、一番変換効率のいいところから補助が外れるんです。全く、実は経産省のやっていることはあなたたちが目指していることと矛盾をしたことをやろうとしている。ましてや、地域的な偏在みたいなものに対しての考慮もしようとしていない。更に言えば、これによって、人件費だけを無理やり、地方の例えば工務店の人件費みたいなものを下げて導入をするようなことで、工事自身がひょっとすると、これは僕はこういうことは言いたくありませんが、非常に手抜きの工事が行われるようなリスクも出てくる。
なぜこのような金額を設定する必要があるのか。ましてや、一家庭三・三キロワットとしたときに、これ補助金額は二百万ぐらいの全体に対して二十万ぐらいです。そのことに対してこういう上限を掛ける合理的な根拠があるのかどうか、明快に経産省、説明していただけますか。
○政府参考人(羽藤秀雄君) そもそも今回、本年七月に閣議決定をされました低炭素社会づくり行動計画におきまして、三年から五年後に太陽光発電システムの価格を現在の半額程度に低減することを目指すということがこれは閣議で決定されておりますので、そういう意味では、まず広く一般国民が入手をしやすいような形で価格の低下を促す。そして、確かに御指摘のとおり、我が国の代表的な太陽電池メーカーを始めとして、供給するサイドの企業には多大な御尽力をお願いすることになりますけれども、マーケットメカニズムあるいは量産効果ということで価格の低下をお願いをするということをそもそも今回の補助金ではねらっておりまして、そういう意味で上限の価格を設定をさせていただいております。
効率のいいものにつきましても、そこも含めて統一的な基準を設けておるということでもございますけれども、これは限られた予算の中で効率的に普及を進めさせていただくという観点からも、補助の対象となる設備についてある程度広く、一般国民が入手しやすい層を中心に考え、そういう観点からこの上限の価格を設定をさせていただいたというものであります。
なお、工事の点でございますけれども、これ施工費も含めたシステム全体の価格を引き下げるということで、確かに塩害あるいは雪害、いろいろな地域によっての差があるというのは御指摘のとおりだと思います。一方で、制度の安定的な運用ということにつきましては、全国一律の客観的な要件を設定する必要もあるというふうに考えた次第でもございます。
いずれにしましても、御指摘のあった事項を含めまして、円滑かつ公平な制度運用を行うべく努めてまいりたいと考えております。
○福山哲郎君 価格をもし低下させることが目的で、国民に広く普及するんだったら、補助率を上げればいいだけの話です。現実の問題として、メーカーの価格を下げることを政府が誘導するなんというのは傲慢以外の何物でもありません。この国はいつから価格統制をする国になったんですか。例えば、液晶テレビ、プラズマテレビ、いろんなテレビやメーカーがある、それぞれのメーカーの価格を政府が下げろと言って何かの設定をするみたいなことなんて、現状あり得るわけないでしょう。
現実の問題として、今まさにお認めになったように、へき地や雪国や、それから人件費の高い安いも含めて、この七十万が本当に合理的かどうかです。
もっと言うと、これで安くすればするほど、海外の太陽光パネルの値段は日本よりも高いです、そうすると、日本の国内メーカーは、日本の国内で売るよりも海外へどんどん出ていきます。日本の今のマーケットのシェアなんというのは、世界で言うと二〇パーぐらいしかありません。国外で売った方がよっぽどもうかると。そうすると、本当に日本に太陽光パネルが普及をして技術開発が促進されるんでしょうか。なぜ、せっかく補助金をスタートしたのに、このような七十万円という中途半端な上限で切って補助金をするんでしょうか。価格を下げる、その前にマーケットを広げることがまず重要なんじゃないでしょうか。私は非常にそのことを残念に思います。
ただし、この補助金制度について私は悪いと言っているのではないので、そこは是非、今のいろんな地域の格差、それから人件費の違い、それからエネルギー効率の高いところがマーケットシェアが拡大できないような、そんな逆行するようなことはやめていただきたい。是非、この制度を運用するときに弾力的に今の欠点を修正をしてスタートできるように、是非、強く強く要請をして、もう時間になりました、まだ言いたいこといっぱいあったんですが、私の質問を終わらせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。