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2016
第192国会 参議院 憲法審査会 2016年11月16日
○会長(柳本卓治君) 福山哲郎君。
○福山哲郎君 民進党の福山哲郎でございます。よろしくお願い申し上げます。
立憲主義は、権力は何らかの形で制限を受けることだということは、委員の先生方も御案内のとおりだと考えます。また、近代立憲主義では、国民の権利と自由を保障する社会の在り方を基本としています。こうした普遍的な価値を表す憲法は、当然、通常の法律とは異なる硬性憲法となっております。
そのことは、なぜかといえば、民主政治の下では選挙のたびに多数派、少数派が分かれ、政府の指導者の考え方によってどのような政治になるかが分からないからです。こういった民主政治の変転と切り離されるべきものだと考えられるからこそ、近代立憲主義における憲法は、一定の硬性憲法として改正に制限が掛けられるわけです。
そのことも含めて、国会法の六十八条の三においては、憲法改正の原案の発議に当たっては、内容において関連する事項ごとに区分して行うことになっております。このことは、例えば憲法改正から今七十年を経る中で、運用上、憲法の明文の改正がどうしてもしなければならない、対応できないという深刻な事態が生じたので、そのために憲法改正を発動するべきだという国民の、これは主権者である国民の強い要請がある場合に、制限を受ける権力を持つ我々自身がこの国会で議論を積み重ね、発議をするという立て付けになっていると私は考えています。
そういった面でいいますと、自民党の憲法草案のように丸ごと憲法を変えるんだというふうになり、内容を拝見いたしますと、国民の自由や権利の保障を侵害するような条文もあるようなものは、九十九条における国会議員の憲法尊重擁護義務との関係でいうとどういう位置付けになるのか、憲法の改正の限界をどのように捉えるのか、非常に重要な視点があると思います。
この憲法審査会においては、先ほどから委員の皆さんがお話があるように、このことは、憲法改正を自己目的化し、憲法改正を発議するためだけを目的とした審査会ではありません。これは、あくまでも日本国憲法や日本国憲法に密接に関連する基本法制について広範かつ総合的に調査を行うこともこの審査会の機能でございますので、その機能もしっかりと役割として果たしていきたいと考えますし、民進党は、先ほど申し上げたように、どうしても憲法を改正しなければいけないというような深刻な事態に対して、我々としても、本当にそのことがあるのかどうか、必要なものがあるかについての議論までを否定するものではありませんし、党内でもその議論は始めたいと考えておりますが、近代立憲主義の在り方の中で、制約を受ける、制限を受ける権力を持つ側が、それぞれが憲法を改正するべきだとか、憲法を改正することが国会議員の責務だと言うことに関しては、いささか今の現行憲法上でいえば私は抵抗を感じざるを得ません。
以上でございます。